コラム
私は元闇金おばさん
闇金社員、初の現場は「ゴミ屋敷」! コバエが弁当にたかる臭い部屋……仏壇の位牌が消えていた
2022/10/01 16:00
細いながらもがっちりとした体格を有する藤原さんは、パンチパーマをかけていることもあって、一見すれば暴力団員にしか見えません。その風貌が影響しているのかはわかりませんが、営業成績は常に振るわず、事務所で話す機会もほとんどありませんでした。本人も自覚されているようで、自分が活躍するのは回収の現場なのだと、自嘲するように話しています。
「自分なんかは、スーパー営業マンの佐藤先輩がいるから、クビにならずに済んでいるようなもんですよ。本当に助かっているっす」
これほど饒舌な方とは思わず、そのイメージは大きく変わりましたが、見かけによらず良い人で好感が持てました。
「ここだ」
見覚えのある住宅街に入り、航空地図を頼りに車を走らせると、その物件はすぐに見つかりました。弁護士の介入通知などは、玄関扉に貼られておらず、呼び鈴を鳴らしても反応はありません。郵便ポストや電気メーターを確認した後、迷うことなく敷地内に入った2人は、小さな庭から家の中を覗き込んでいます。
「メーターは少し回っているけど、中(屋内)の感じからすると、間違いなく飛んで(夜逃げして)いるよ。会社に報告入れたら、鍵屋を呼んで中に入ろう」
玄関前に車を横付けして、周囲を警戒しながら鍵屋の到着を待っていると、しばらくして60歳くらいにみえるホームレス風の男性が小さなトランクを引いて現れました。あまり目立つのはよくないということで、私と藤原さんは車から降りることなく、車内から状況を見守ります。