闇金社員、初の現場は「ゴミ屋敷」! コバエが弁当にたかる臭い部屋……仏壇の位牌が消えていた
このコンビは、社内で取り立て最強タッグといわれており、いつも先陣を切って現場に飛んでいきます。なんでも武闘派の藤原さんが暴れ、優男の佐藤さんがなだめて客に取り入るやり方が、うまく型にハマるという評判でした。
社用車は、ランドクルーザー。手荷物を入れるべくトランクを開くと、バールやドライバーといった工具のほか、レトルト食品やカップ麺、2つの布団袋が積まれています。それらの使途が気になって、すぐ隣でバッグを積み込む佐藤さんに尋ねると、さわやかに答えてくれました。
「バールなんて、何に使うんですか?」
「現場が遠かったりして、鍵屋が用意できないときは、壊して入ることもあるからさ。いつでも占有できるように、きれいな布団と食料も常備してあるの」
「知らない人の家で寝るって、どんな気分なんですか? 怖くないです?」
「怖くはないけど、気持ち悪いよね。俺は、トイレとかお風呂とか、水回りを使うのが嫌だな。食器とかも使いたくない」
車に乗り込みドアを閉めると、傍らで話を聞いていた藤原さんが、車を発進させながら口を開きました。
「俺は現場に入ると、緊張しちゃってダメっすね。他業者や警察が、いつ来るかわからないし、全然油断できないっす」
「何か怖い思いをしたこともあるんですか?」
「夜中に、債権回収に来た同業のKグループの奴らに物件の周りを取り囲まれて、一斉にノックされたときが一番焦ったっすね。少なくとも50人くらいは来ていたんじゃないかなあ。すごい人数で来ているのがわかったし、逃げ場がないから、あの時は参ったすよ」
結局、その時は人が集まりすぎて現場で揉めてしまい、警察沙汰になったとのこと。パトカーはもちろん、護送車が3台もきたそうで、関係者全員がそれに乗せられて、いくつかの警察署に振り分けられたと話しています。
「あの時は、パクられるのを覚悟したけど、誰も手を出していないから厳重注意ですんだっすよ。殴られたら有利になるからって、社長にいわれて仕向けてみたけど、手の内を知る向こうも、さすがに手は出してこなかったっす。結局、口げんかで終わって、拍子抜けしたっすね」
「殴られろと指示されるなんて……。そんな会社、聞いたことないです」
「そうっすよね? ウチは普通の会社じゃないっすから……。まあ、でも、そういうところが楽しくて、お世話になってるっす」