DV夫に「殺されるんじゃないか」と離婚を決意——母子3人で家を出て行きついた先とは【後編】

2022/10/09 18:00
坂口鈴香(ライター)

助けてと言えないのは自己責任なのか

 多田さんは自身の経験や古川さんを通して、「夫婦関係はブラックボックス化しやすい」と感じている。

「夫に『お前が悪い』と言われて、萎縮してしまうこともあります。すると外に助けを求められなくなってしまう。『助けて』と言えなくなるんです」

 支援する側が、そうした状況を理解していないことも少なくないと指摘する。

「困っているなら困っていると言えばいい。嫌ならそこから出ればいい。そこにいることを決めたのはあなたなのだから、自己責任だと断定してしまう。夫のコントロール下におかれた状況では、そこから逃げるのは並大抵の努力ではできないんです。だからこそ、客観的にその人の状況を把握、判断して、サポートする第三者の存在は重要なんです」

 相談する相手も大事だという。


「やっと支援につながったと思ったら、市役所でたらいまわしにされたケースもあります。まずは安心して話せる関係づくりが大事だと思っています」

 古川さんが急に家を出ないといけなくなっても、スムーズに支援者につながることができたのは、それまでにさまざまな人につながって、多少なりとも状況を伝えていたからだと多田さんはいう。だからこそ、本当に困る前に誰かにつながっておくことが大切だと伝えたい。そして産後TOMOサポは、いつでもなんでもフランクに相談できる相手でありたいと考えている。

 多田さんは、不登校の子どもをサポートする活動もはじめた。子どもの年齢にかかわらず、母親や子どもが社会から孤立している状況をもたらす問題の根本は同じだと考えているからだ。

 助け、助けられて、今の自分がある――多田さんの実感だ。多田さんの思いがより多くの人に届いてほしい。

産後TOMOサポ:https://yuumin2020.com/


坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2022/10/09 18:00
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