『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』暴言・暴力も「ありのまま」の異色介護「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」

2022/08/01 18:42
石徹白未亜(ライター)
写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月31日の放送は「ありのままでいいじゃない ~いしいさん家の人々~前編」。

あらすじ

 介護業界でも異色の施設と呼ばれる、千葉県の宅幼老所「いしいさん家」。認知症や統合失調症など、暴力・暴言といった問題行動を理由に他施設から「お断り」された人たちが集まっている。

 「いしいさん家」を運営する石井英寿は高校時代のボランティア活動をきっかけに介護の仕事に触れ、大学卒業後大手介護企業に就職するも、午前中50人の入居者を入浴させるなどの効率重視の施設運営に違和感を覚え、いしいさん家を16年前に立ち上げる。

 石井は「暴言・暴力とか、唾を吐いたりとか、そういった人たちを向精神薬とか、薬で抑えつけられちゃっている人とか、縛られている人も見てきたので、いっぱい。80~90歳でそんな人生の最後でいいのか」「(薬を)抜いちゃおうよ、『ありのままのその人でいいでしょ』というのが根本にあって」と話す。

 スタッフと利用者はほぼ同数と、手厚い介護をしているが、「ありのまま」を受け入れる施設スタッフの苦労は相当なもので、スタッフの手には生傷が絶えない。また、会計士からは経費をコントロールするよう言われるが、スタッフの人件費だけは削るわけにはいかない。


 番組スタッフのカメラが気に食わなかった様子の70代の認知症患者・タマエは「バカ野郎」が口癖で、デイサービスでいしいさん家を利用している。タマエの扱いを心得たスタッフは機嫌の悪いタマエを車に入れる。ドライブと歌が好きなタマエは、車に乗って音楽を流すと先ほどの不機嫌からきれいさっぱり、上機嫌な様子になっていた。

 夜はタマエの夫、カズオがタマエを介護している。少し目を離すとタマエは徘徊してしまうようで、慣れた様子でタマエを車で探していた。カズオはタマエを特別養護老人ホームに入れなかった理由として、特養だと外に出させず、食事が終わったらすぐ睡眠薬を飲ませて、という生活がかわいそうだと思って、と話す。

 デイサービスの利用者、46歳の2児の父親で統合失調症のヤマピーは、普段はピアノ演奏で周りを楽しませるほど穏やかだが、ふとしたことで態度が一変、激昂してしまう。ヤマピーは医師である父親からの暴力、暴言がひどかったようで、自尊心を傷つけられたそうだが、事あるごとにその話をスタッフに延々とする。

 家庭でも、隣人があいさつしてくれないと妻に不満をこぼす。家でも大声で騒ぎ、パジャマ姿でバットを持って外に出たときには、警察を呼んで大変だったと、子どもが話していた。

 ヤマピーの「もっと話を聞いてほしい」という不満は日に日に強くなっていき、金額はいくらでもいいから自分専用の専属スタッフをつけてほしいと施設側に要求。発言がエスカレートしていくヤマピーをたしなめていたスタッフの福田は、「(ヤマピーが)ケガをさせなきゃいいなと思う、誰かにね」と話す。


 しかしその不安は的中してしまい、福田自身がヤマピーからアザが残るほどの暴力を振るわれる。番組の最後では福田が石井に不満を伝えるシーンが放送されていた。

統合失調症にかかりました