[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

Netflix『梨泰院クラス』理解を深める3つの知識! 「梨泰院・財閥・クラス」の社会的背景とは?

2022/07/15 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

BTS・ジョングクが家を購入した「梨泰院」の痛ましい歴史

 だが一方で、米軍基地を囲んだその繁栄の陰には、米軍「慰安婦」の存在があることも忘れてはならない。梨泰院は、ソウルのど真ん中につくられた基地村でもあったのだ(米軍「慰安婦」や基地村については『バッカス・レディ』のコラムを参照)。

 梨泰院の国際化が進めば進むほど、米軍「慰安婦」たちは知られてはならない透明な存在となって排除された。とりわけ1997年、ソウル市が梨泰院を韓国初の観光特区に指定してからは、多くの米軍「慰安婦」が梨泰院から去らざるを得なくなり、わずかに残った人たちは、年をとった今も梨泰院周辺にひっそりと暮らしている。

 最近では、BTSのメンバー・ジョングクが76億ウォン(約7億円)で家を購入したことも話題になり、金持ちや芸能人が多く暮らす「富豪の街」というイメージが強い梨泰院だが、こうした華やかな側面とは裏腹に、痛ましい歴史の物語も抱えているのだ。

 そんな梨泰院を舞台に繰り広げられるのは、パク・「セロイ=新しい」という不思議な名前を持つ青年が、最愛の父と自分の人生を奪った「長家(チャンガ)」という韓国外食産業のトップに君臨する会社への復讐である。ファンタジーとして人気を博した物語だが、とりわけ韓国において、長家のような「財閥」は今なお社会や経済を牛耳っており、多くの国民にとって憧れであると同時に憎らしく、生々しい感情を喚起させる存在だ。


梨泰院(イテウォン)クラス オリジナルサウンドトラック