[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

Netflix『梨泰院クラス』理解を深める3つの知識! 「梨泰院・財閥・クラス」の社会的背景とは?

2022/07/15 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

『梨泰院クラス』舞台の成り立ちに深く関わる、米軍基地の存在

 こうして見てみると、梨泰院は確かに東京でいう「六本木」にあたるだろう。一方、先にも述べたように、梨泰院の成り立ちには「米軍基地」が密接に関わっている。

 日本の植民地から独立後、ソウルの龍山(ヨンサン)にあった旧日本軍基地に米軍が駐屯し、広大な米軍基地が形成された(この米軍基地は2017年に、京畿道平澤<キョンギド・ピョンテク>に移転。現在は公園になっている)。梨泰院はこの米軍基地と隣接していたことから、自然と米兵相手の店舗が並ぶようになって「梨泰院市場」を形成、繁栄し始めた。

 当初はアメリカ一色だったが、80年代以降は外国の大使館や大使公邸なども多く建ち、米兵や関係者以外の外国人も目立つように。90年代には外国からの移住者や労働者も加わってさらに多国籍多人種の人々でにぎわい、「ソウルの中の外国」と呼ばれた。私の記憶にある10年の時を隔てた2つの梨泰院は、アメリカ色の濃かった街からグローバルな街並みへと移り変わっていく時代とちょうど一致していたのだ。

 2000年代になると、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーのためのカフェやクラブも増え、少なくとも、梨泰院は誰もが差別を受けることなく自由にいられる街だと認識されるようになった。ドラマにも登場する「ハロウィン祭り」が始まったのは10年で、期間中は韓国人の若者や外国人、観光客で街全体が埋め尽くされる。『梨泰院クラス』の原作者は、こうした「自由と多様性」を重要な土台と捉え、この街を物語の舞台として選んだのかもしれない。


梨泰院(イテウォン)クラス オリジナルサウンドトラック