サイゾーウーマン芸能韓流『ベイビー・ブローカー』鑑賞前に知りたいポイント 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』、鑑賞前に知りたい韓国「ベイビーボックス」の実態 2022/06/24 19:00 崔盛旭(チェ・ソンウク) 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 韓国の「ベイビーボックス」には、1,989人の赤ちゃんが入れられた (C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED そもそも、ベイビーボックスというシステムは、いつから始まったのだろうか。プロテスタント系の주사랑(ジュサラン)共同体教会が捨てられる赤ちゃんを1人でも多く救うため、09年に教会内に設置したのが最初とされる。だが、その是非をめぐっては、赤ちゃんの尊い命を守る最後の砦であるとする賛成論と、むしろ赤ちゃんを捨てることを助長するという反対論が噴出した。現在も続くこの議論はつまるところ、ベイビーボックスをどう見るかの問題なのだ。 教会の統計によると、設置から22年現在までに、延べ1,989人の赤ちゃんがベイビーボックスに入れられたが、その数を「救われた」と見るのか「捨てられた」と捉えるかによって、ボックスに対する是非も変わってくる。いずれにせよ、これほど多くの赤ちゃんが、親のさまざまな事情や、あるいは無責任な理由によって「預けられた」ことは紛れもない事実である。 統計をさらに細かく見ていくと、10年に4人が預けられ、11年に35人、12年に79人と、設置からしばらくは小幅な増加だったのが、13年になるといきなり252人に急増。その後も年平均で200人以上の赤ちゃんが預けられている。13年になぜここまで増えたのかといえば、それは前年に改正された「入養(養子縁組)特例法」の全面施行が関係している。 この法改正は、海外との養子縁組を抑制して「孤児輸出大国」の汚名を払拭する目的で行われたもので、養子縁組の際の条件に、赤ちゃんの「出生届」提出が義務化されることになったのである。つまり、養子に出したい親たちはその事情のいかんにかかわらず、身元を明かさなければならなくなったのだ。 将来、子どもが自分のルーツを知りたいと思った時に必要な情報を与えるといった、子どもの人権を守る意味もあったのだが、現実には、養子縁組の手続きを避け、身元を隠したままベイビーボックスに赤ちゃんを預ける親が急増する事態を引き起こした。 出生届がなければ養子縁組に託すことができないため、身元不明のまま預けられた赤ちゃんの未来は、さらに不安定になってしまう。まさに本末転倒の結果となってしまったのだ(海外養子縁組や孤児輸出については、以前のコラム『冬の小鳥』を参照)。 韓国映画が描かないタブー「孤児輸出」の実態――『冬の小鳥』 では言及されなかった「養子縁組」をめぐる問題近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。しかし作品の根底にある国民性・価値観の理解にまでは至っていないのではないだろうか。このコラムでは...サイゾーウーマン2021.03.05 次のページ 『ベイビー・ブローカー』の背景にある、悪しき伝統や意識 前のページ123456次のページ 楽天 Yahoo セブンネット 赤ちゃんポストの真実 関連記事 「同性愛は治療で治る」韓国・ユン大統領秘書の発言が炎上! 映画『私の少女』が描く「LGBTと社会」の現在地Netflix『未成年裁判』は“ほぼ実話”? モチーフになった事件と、ドラマで描かれなかった「犯行動機」のうわさ映画『野球少女』で描かれた、韓国初の女性野球選手はいま――物語とは決定的に異なる「悲しい」結末韓国映画『バッカス・レディ』4つのセリフが示す、韓国現代史の負の側面を背負う高齢売春婦の悲しすぎる人生人気の韓国映画『7番房の奇跡』、時代設定が「1997年」だった知られざる理由