新進女優・斎藤莉奈が語る、「オーディションも撮影現場もオープン」な英国映画界
――英国ではオーディションの進め方も、プロデューサーや監督たちの間でいつの間にかキャスティングが決まっている日本映画とは、かなり違うようですね。
斎藤 日本では所属事務所を通してオーディション情報が入ってくることがほとんどですが、英国では俳優みんなが登録しているサイトがあり、あらゆるオーディション情報がオープンになっているんです。人気ドラマのメインキャラクターのオーディション情報も載っていたりします。オーディションは、事務所に入っていなくても誰でも受けることが可能。事務所から連絡が入ることもありますが、今回の『クリーチャーズ』のように、自分で見つけるものも多く、私の場合は五分五分です。事務所のマネジャーは、よく言えば「あなたはあなたのままでいいのよ」というスタンスなので、ただ待っているだけだと何も始まらないこともありえます。自分でセルフプロデュースして、働き掛けていくことは大事だなと痛感しています。
――日本では最近になって、プロデューサーや監督のパワハラやセクハラ的言動が問題視されるようになってきました。英国のオーディションや撮影現場でそのような状況に遭うことはない?
斎藤 オーディションの面接担当者たちは、ジェンダー差別や宗教差別、人種問題につながりそうな発言はしないよう、すごく気をつけている印象です。多様性を尊重することを意識しているみたいですね。「怒る」という感情をまず見せませんし、撮影現場でも大きな声を出す人がいると、みんな驚いて「えっ、何かあったの?」と集まって、現場の雰囲気を修復するよう努めていますね。もちろん日本には日本のよさがありますが、英国では気持ちよく仕事ができています。
――ハリウッドでは、セクシャルなシーンのある作品にはインティマシー・コーディネーター(俳優と監督の間に入り、コミュニケーションを取りながらハラスメントを防止する調整役)が付くことが主流化しつつあるようですが、英国ではどうでしょうか?
斎藤 『クリーチャーズ』にはそういうシーンはなかったので、インティマシー・コーディネーターはいませんでした。でも、メジャーな作品に出演した人に聞くと、性的にセンシティブなシーンがある場合は、インティマシー・コーディネーターも入って、撮影前にしっかりとディスカッションするみたいですね
――英国のインディペンデント映画の面白さは、どんなところにあると感じていますか?
斎藤 ハリウッド映画にも出ているような人気キャストも、英国のインディペンデント映画にはけっこう出演しています。事務所の意向よりも、俳優本人が「この作品に出たい」と思えば、本人の意思が尊重されるんです。『クリーチャーズ』に大学生役で出演しているクリスト・フェルナンデスは、アップルTVの配信ドラマに主演している売り出し中のメキシコ系の若手男優。そんな国際的に活躍するキャストやスタッフと一緒に仕事できるのも、英国映画の面白さでしょうね。