オンナ万引きGメン日誌

「やられた!」目の前で煙のように消えた万引き犯――ベテランGメンが執念の追跡で捕まえた犯人の正体!

2022/05/14 16:00
澄江(保安員)

「きっと、やる」執念の追跡で判明した犯人の身元

「どこに行ったのかしら?」

 慌てて周囲を探すも、女の姿はありません。近くにある旅行代理店やモバイルショップなど、周囲のテナントはもちろん店外にまで探索範囲を広げて10分近く探してみましたが、その姿を見つけることはできませんでした。

「やられた!」

 冷静に考えれば、いまここに女が現れても、声をかけるわけにはいきません。目切れ(目を離しているという意味)している間に、何をしているかわからないので、もはやあきらめるほかないのです。気持ちを切り替えて食品売り場に戻ると、先ほど目を奪われたホームレス風の男性が、298円の激安弁当と38円のお茶を手に持ってレジに並んでいました。

「今日は、ダメかもしれないわ」


 朝一番から失敗してしまったことが響いたのか、なにひとつ活躍できぬまま業務は終盤を迎えます。眠気を堪え、疲れた体を引きずるように巡回していると、一瞬にして目の覚める出来事が起こりました。

 朝、見失った女が、菓子売り場に現れたのです。運のいいことに、店に入ってきたばかりのようで、まだ何も手にしていない状況です。

「きっと、やる」

 そう確信して行動を見守れば、特上の握り寿司と特定保健系のお茶(500ml)を手に取った女は、次に菓子売り場で舶来物のクッキーと箱入りのチョコレートを棚取りして握り寿司の上に載せると、朝見た時と同じ経路でレジを通過しました。

 またしても専門店街へ向かっていくので、見失わないよう近距離で追尾すると、テナントのモバイルショップに入っていきました。裏のバックヤードに入っていくところをみれば、ここの従業員に違いありません。


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