【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

秋篠宮家が「推薦入試」にこだわり続ける事情――学習院のほかは「不合格」だった佳子さまに見る“事実”

2022/03/26 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

進学問題に四苦八苦するのは「人間的」すぎる?

堀江 しかし……学習面での優劣を公開しすぎると、「神秘性」は消えてなくなります。

 現在においても日本で君主制が支持されているのは、皇族方にはほかの人々にはない「神秘性」があるからで、それに多くの国民が強い魅力を感じているからです。理屈とか論理と、そうした「神秘性」は完全に別と思いますね。日本の皇室だけでなく、たとえばヨーロッパの王族を見ていても、理屈は同じです。

 たとえば、進学問題に四苦八苦する将来の天皇というのは、あまりに人間的すぎないでしょうか? 超然としすぎていても人気がなくなってしまうので、人間としての側面を公開するにはさじ加減が難しいのですが。

――秋篠宮家は「皇族は学習院に行くものだ」という、世間がなんとなく伝統にしてしまったことを覆してしまいましたが……。

堀江 思い出したのですけど、グスタフ・マーラーというクラシックの作曲家が「伝統とは怠惰のことだ」と発言しているのですが、秋篠宮家の家風もそれに近いのかもしれませんね。高い理想を持つことは素晴らしいのですが。伝統とは適切な距離を置いて付き合うことも本当は大事だと思いますよ。


 思えば、過去にもそうした野心的な傾向のある天皇は何人かおられました。形骸化した朝廷、腐敗した鎌倉幕府を打倒した後醍醐天皇は、「朕が新儀は未来の先例たるべし」(『梅松論』)と発言しました。「私が行う新しい政治は、未来の人々には貴重な先例として振り返られるだろう」という意味で、先例のない政治を目指しましたが、結局、大失敗して、後醍醐天皇の打ち出した「新儀」は跡形もなく消え去ってしまいました。

 21世紀の日本において、天皇そして皇族という存在に人々は何を夢見ているのか。それに応える「新儀」でないかぎり、未来は暗いといえるかもしれません。

 

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2022/03/26 17:00
偉人の年収
「まぁまぁでいい」とか学習院が勝手に決めないで?