白央篤司の「食本書評」

ブロッコリーも豆苗のように再び収穫できる!? キッチンでできる「日本一カンタンな家庭菜園」がすごすぎ

2022/01/08 17:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

時短、カンタン、ヘルシー、がっつり……世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本を、フードライター白央篤司が毎月1冊選んで、料理を実践しつつご紹介!

今月の1冊:『キッチンからはじめる! 日本一カンタンな家庭菜園の入門本 おうち野菜づくり』宮崎大輔著

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『キッチンからはじめる! 日本一カンタンな家庭菜園の入門本 おうち野菜づくり』KADOKAWA 発行 1760円 2021年10月14日発行

 リボベジという言葉をこの本で知った。

 リボーンベジタブル、野菜の再生栽培のことだそうな。「スーパーで買った野菜の切れ端から、その野菜が再生」できる、と前書きにある。

 なるほど、つまり私もリボベジは何度も体験していたのだ。豆苗である。豆苗は発芽した豆と根っこがそのままセットでパッケージされて売られている。食べる部分を切り取ったあと、トレーにのせて水に浸けておくと数日でまた成長し、再び食べられるのだ。実際にやったことのある人も多いはず。

 本書でも豆苗は紹介されている。見てみると(134ページ)、難易度は☆4つのうち、最も簡単な☆1つ。最初に食べるとき刻むべきところや、トレーにはる水の適量などなど、今まで特に気にもせずやっていたポイントを教えてくれるのがうれしい。

 庭がなくとも、タネを買わなくても野菜づくりはできる。日頃食べる野菜の一部を使うからお金がかからない……と、リボベジの魅力を説くのは農業コンサルタントの宮崎大輔さん。日本や海外を相手に農業経営のコンサルティングをする一方、家庭菜園のコツを伝えるYoutuberとしても活動。チャンネル登録者は約13万人という人気者だ。

 数は決して多くないが、本書にもQRコードがあり、動画解説とリンクする項もある。宮崎さんは語り口がおだやかで、変に浮かれたところがなく、聞いていてとても安心感があって分かりやすい。

 そんな語り口が、本書の構成でも再現されている。各野菜の特徴や育て方が無駄なくシンプルに示され、読んでいて頭にスッと入ってきた(一度でも宮崎さんの動画を見ていると、さらに読みやすさはグンと上がると思う)。

 食べる分にはなじみのある野菜の、知らなかった一面を知れるのも楽しい。なんだかその野菜の「性格」を知れたような、そんな面白さ。「クレソンはとにかく生命力が強い」「モロヘイヤのサヤやタネ、老化した枝葉には毒がある」「ツルムラサキは花も食べられる」「ブロッコリーは再生栽培野菜としては最高レベルの難しさ」なんてくだりには、へええと声を出してしまった。

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章立てもわかりやすい(C)サイゾーウーマン

 しっかり読んでおきたいのは「基本アイテム」のところ。このへんをおざなりにして適当に買いそろえてしまうと、後で結局不便を感じ、買い直すことは多いのだ。

 園芸シートや日付を書き込めるタグの重要性、やってみると分かるが大事なんだよなあ。スコップやジョウロといった超基本アイテムの選び方もさらりと書き込まれていて、本の信頼性を増している。

 身のまわりにある日用品を野菜づくりに応用しよう、というコーナーも楽しい。ペットボトルや牛乳パックはおなじみかもしれないが、内側にプチプチのついた封筒や調味料のプラ容器も向いているとは知らなかった。詳細はぜひ本書で。

 バジルやミントは本当に増やしやすいので、興味のある方はぜひ試してみてほしい。ビギナーからちょっと腕に覚えのある人まで、広く使える本だと思う。

 また野菜作りを経験すると、その野菜が苦手なお子さんも積極的に食べるようになるという話は実によく聞かれる。お子さんがいる方は、春から一緒に試してみてはどうだろう。

 私は大好きなクウシンサイをもう少し温かくなったら試してみるつもりだ。しかしクウシンサイが水浸けから増やせるなんて、思いもよらなかった。ちなみに宮崎さん判定による生育難易度は☆2つ、どうか成功しますように。

白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。

最終更新:2022/01/12 12:38
キッチンからはじめる!日本一カンタンな家庭菜園の入門本 おうち野菜づくり
植物の生命力にびっくり