サイゾーウーマンコラム会いたくない母のもとに通うワケ コラム 老いゆく親と、どう向き合う? 弟を溺愛する母から「もう二度と会いたくない」と怒鳴られても……毎週、実家に通う理由 2021/12/12 18:00 坂口鈴香(ライター) 老いゆく親と、どう向き合う? 人間は引き際が大事だと思う 宮下さんが父・明さん(仮名・92)に涼子さんの理不尽な言動を訴えても「いつも苦労をかけてすまないな」と切なそうに謝るばかりで、それ以上は言えなくなってしまう。 明さんの病状も気にかかる。医師からは「いつ急変してもおかしくない」と言われ、在宅医療を利用することになった。 「少なくともこれで母が父を連れて病院まで運転することはなくなってホッとしています」と、安堵しながらも複雑な思いだ。穏やかな明さんの存在は宮下さんの支えなのだろう。 それにしても、だ。 「もう二度と会いたくない」と涼子さんから怒鳴られ、宮下さんも同じ気持ちを抱きながらも、宮下さんは毎週両親のもとに通う。なぜ涼子さんと距離を置こうとしないのだろうか。 「もちろん精神状態に悪いのはよくわかっています。『親が死んでもトラウマは残る』と言った友人がいますが、本当にそうだろうなと思います。親を殺す人の気持ちもわかります。それでも親だから仕方ない、というしかないですね。母には期待しない、今はそれが私の心を守る方法だと思っています」 話を聞いたこの日もこれから実家に向かうという。「なるべく母が出かけていない日に顔を出すようにしています」と自嘲気味に笑う。 「母を見ていると、人間は引き際が大事だと痛感しています。私はあと10年程度で運転はやめると決めています」 宮下さんは「発言に責任を持ちたいので、本名を出してもらってかまいません」と言ってくれた。宮下さんのような女性を生み育てたことは、涼子さんの功績なのかもしれない。足早に立ち去る宮下さんの後姿を見ながら思った。もちろん、反面教師として、だが。 前のページ12 坂口鈴香(ライター) 終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 記事一覧 最終更新:2021/12/12 18:00 セブンネット 運転免許認知機能検査ブック シニアドライバーの安全運転対策 免許返納のいざこざは一端にすぎない 関連記事 「わが母ながら立派」と思っていたが……同居する弟夫婦は「他人以下」、父の介護に一人で取り組む心情は聞くに聞けない実家の将来は“安泰”と思っていたが……「おかしいなと思った」母の言動と、あっという間に崩れた生活「父ちゃんが浮気してる」「女の人が来てる」幻覚に苦しむ認知症の母に、“写真”に撮って確認させたアル中で寝たきりになった父と、10年の介護ーー離婚しても見捨てなかった「母の意地」「長女の私に、とにかく厳しかった」監視する母とアル中だった父――老いた親を前に、娘の本心は 次の記事 手土産に“市販のお菓子NG”のママに困惑 >