ベテラン万引きGメンが負傷! 人気芸人似の凶悪犯と命がけの対決【歳末警戒SP】
当日の現場は、大型ショッピングセンターS。関東近県の駅前に位置する店舗で、8階建てのビル一棟、すべてが売場になっている大型店舗です。
ここ数年、月に10日ほど入っている現場で、相当数の捕捉をこなしてきました。土地柄なのか、高齢の常習者が目立ち、高価な酒や化粧品などを狙う換金目的の被疑者も散見されます。前回の勤務では、スポーツドリンクや機能性食品を盗んで捕まった被疑者の所持品から覚せい剤が発見されるという事案も発生しており、どうしても粗暴な雰囲気を感じてしまう現場といえるでしょう。
万引きだけでなく、内部不正(従業員や出入り業者などによる内引き行為)も頻発していることから、出勤のあいさつは店長に直電するよう指示されています。事務所まであいさつに伺えば、保安員導入を周知させることになりかねず、隠密な入店を求められることもあるのです。この日の勤務は、午前12時から午後8時まで。
店の正面口から店長に電話をかけて、どことなく木下富美子元都議に似ている30代の女性店長に出勤のあいさつをしてから勤務を始めました。
「おはようございます。これから入りますが、なにか注意することはございますか?」
「通常通りでお願いします。年末なので、充分に気をつけてくださいね」
急に忙しくなるから面倒なのだと、保安員の導入を毛嫌いする店長もおられるなか、優しく対応していただき気分よく現場に入ります。
食品売場は、年末年始の買い出しに来られたお客様であふれており、人ごみに紛れながら不審者探索に没頭するも、特に成果のないまま業務終盤を迎えることとなりました。外もすっかり暗くなってしまい、少し息を抜くべく入口脇のベンチに腰をかけて入店していく人たちを眺めていると、一瞬で目を奪われるほどの不審者を見つけます。