『ねほりんぱほりん』で描かれた「親が“神様”を名乗る」問題は深刻? 信仰を押しつける母と、子どものつらい人生
ネット上には、無責任な理論で集客しては人を食い物にするような、スピリチュアリスト、霊能者、民間資格カウンセラーなどがあふれています。彼らを信じ込んでしまえば、価値観や金銭感覚をゆがめられるのはあっという間。友人や家族を失ってからでは、もう遅い! 「スピリチュアルウォッチャー」黒猫ドラネコが、現代社会にのさばる怪しい“教祖様”を眼光鋭く分析します。
11月12日にNHK Eテレで放送された『ねほりんぱほりん』は、「親が“神様”を名乗る人」がテーマでした。除霊ができるなどと豪語する母親のもとに生まれた30代女性のインタビューで、どぎつい話もありましたが、人形劇で進む番組のスタンスもあってか緩いトーンだったため、思ったよりも救いのある展開でホッとしました。
物心ついた頃から、母親は「独自の宗教」のような団体で“教祖様”として君臨。女性は日常の全てを母親に「霊」と結びつけられ、「集まって瞑想」「邪気をお祓い」「手から念を送る修行」などの不可思議な日々を送っていたそう。まさに、生まれた時からエセ・スピリチュアルが身近にある状態です。
自ら「お母さんは神様だから」とかたる親。その様子を学校でもうわさされ、女性はイジメを受けます。それでも母親には「あなたが引き寄せたのよ」(スピリチュアル界隈でよく聞く言い回しですね)と言われるなどし、高校生の頃に性的被害に遭って自殺未遂をしたときですら、「信仰が足りないからそんな目に遭うのよ。ざまを見なさい」と罵られたエピソードは強烈でした。
ただ、女性がそんなキツすぎる母親と関わらないで生きていくにはどうすればいいかを考え、遠く離れて暮らしたいと猛勉強して、環境を変えられたのは救いだと思います。離れてから、女性は精神的な治療も受け、母親と初めての大ゲンカをし、今では「遺産目当て」で交流しているとのオチも。何より、こうした番組に出られたことからも、苦難を糧に明るく生きているということがうかがえました。
しかしながら、この女性のように意志を強く持ち、自分の中で折り合いをつけられる人ばかりではないでしょう。信仰の自由が尊重されるべきなのに、親の信仰を押し付けられて苦しむ「宗教二世」の問題は、かなり深刻だといえます。『ねほりんぱほりん』のような例だけでなく、教育の機会が限定されたり、暴力で縛られたり、一般社会で生活を送る道筋を立ててもらえず、つらい人生を送る人も知っています。
また、ここまでの被害を受けていなくても、スピリチュアル好きが高じて“プチ教祖”や“信者”と化した親との関係に悩まされる人は、案外多いのではないでしょうか。私のもとにはよく「実家にいる母親が、いつの間にか子宮系スピリチュアルにハマってしまった」「母親がスピリチュアル系の資格を取るために高額セミナーに通っている」などの相談が来ます。子どもが成人してもなお、親子関係にエセ・スピリチュアルの魔の手が迫ることは珍しくないのです。