コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

皇族の“特権”を失った元・プリンセスはハードモード! 「使用人」として生きた皇女の忌まわしい事件

2021/11/20 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江 当時の皇室には超問題人物というべき花山法皇という方がおられました。この方が自分の乳母の娘……本来なら、自分のきょうだい同然に育った女性で、「中務(なかつかさ)」と呼ばれていた女房(=女性使用人)に手を出したのです。

――近親相姦のニオイが……。

堀江 平安当時のゆるめの性愛倫理ではタブーとはいえないまでも、世間に「えっ?」という顔をされる関係ではないでしょうか。

 花山法皇は中務に執着し、娘を二人、息子も一人生ませそうです。妹のほうは、「兵部(ひょうぶ)」と呼ばれる女房のもとに、生まれてすぐ里子に出されました。理由はわかりません。ただ、双子のきょうだい同然の女性(しかも既婚者)に手を出し続け、何度も妊娠させてしまう自分のおこないが急に恥ずかしくなったのかも。

――花山法皇、やらかしてますねぇ……。

堀江 ちなみに中務や兵部は、上流貴族や皇族にお仕えする女房にすぎません。ただの使用人です。

 身分の高い男性が、女性使用人に手を出すことは、黙認されていました。女性側にも金銭面などで援助を受けられるとか、それなりのメリットはありました。しかし、女性使用人が高位の男性に愛されたところで、彼のお妃候補になれるような奇跡は起きません。身分による壁が立ちはだかっていたからです。

 当時、高位の男性が身分の低い女性と付き合った場合、女性は「愛人」どころか「召人(めしうど)」、つまりは“寝室専門メイド”のような呼び名で呼ばれたのですね。そんな“夜のメイド”である召人が生んだ子が男でも女でも、生涯プリンスあるいはプリンセスとして扱われることは基本的にありません。

 女子の場合は、幼い頃、寺に捨てられるようにして入れられてしまうか、上流階級のお嬢様の使用人となるべく育てられるのが関の山でした。それが、花山法皇と中務の間に生まれた娘の宿命だったのです。

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