サイゾーウーマンカルチャーマンガ倉田真由美が50歳で挑む新境地 カルチャー 『だめんず・うぉ~か~』倉田真由美が50歳で挑む新境地! 初の長編ミステリー&電子コミック『凶母』の制作秘話 2021/10/26 11:15 サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman) 倉田真由美インタビュー この先も漫画を描き続けるなら、縮小再生産は嫌だった ――エッセイ漫画のパイオニアであるくらたまさんが、まさかミステリーとは驚きました。 倉田 Twitterで恋愛4コマとか動物4コマとかやろうとしたけど、それって結局、今までやってきたことの縮小再生産なんですよね。まったく新しいことに挑戦しているっていう感覚はぜんぜんなくて。年齢を重ねていくと、どうしても縮小再生産になりがちだし、そうなると「若いころのほうがよかったね」ってなるのは、初めから見えているわけですよ。これから50代、60代になっても描き続けたいと思うんなら、それだと難しいなって。 もともと才能のある人が同じことを続けても縮小にはなっていかないし、読者もついてきてくれる。でも、わたしはそうじゃないから、新しいことをしないとなって。そういう客観的な、自分に対する叱咤激励もありますよね。そんな中で自分が好きなジャンルって限られていて、恋愛、ホラー、ミステリー、SF…この4つかなって。 ――ミステリーは、普段からよく読まれるんですか? 倉田 東野圭吾さんは全般的に好きだし、綾辻行人さんや、漫画だと伊藤潤二さん。あと、映画で言うと、この漫画にも出てくる『羊たちの沈黙』や、昔、テレ東の日曜映画劇場でやっていた『料理長(シェフ)殿、ご用心』もすごく好きですね。おどろおどろしい作品がすきなんですよね。首がないとか、猟奇殺人に興味を持ってしまうので、それを自分で描けるっていうのは楽しいですよね。 ――本作のプロットは10万字超の小説形式で、かなり力が入っていますね。制作期間はどれくらいだったんですか? 倉田 3~4カ月くらいかな。とにかく最後まで書いてしまわないと絵には起こせないぞって。だから今、ネームにするときはすごく楽ですね。わたし自身、トリックが破綻しているところに目がいってしまうタイプだから、なるべくそこはつぶしていかないと、って意識しましたね。 ――執筆にあたり、何か影響を受けた作品や事件などあるんでしょうか? 倉田 いや、特にないんです。殺人ありきで、どうやったら完全犯罪を成立させられるか、を頭の中で考えていきました。結局わたし、トリックが好きなんですよね。「なんで?」みたいなことを逆算して考えていく。わりと数学的な思考だと思うんだけど、そういうことを考えるのが嫌いじゃないんだなって、これをやり始めて初めて気づきました。 漫画って、それぞれのキャラクターの心情を丁寧に描く人とか、いろいろなタイプがいるけど、わたしはどちらかというと、少なくても今は、トリック的なもので読者をあっと驚かせたいっていうのがありますね。 ――まさに、新境地ですね。 倉田 だから『凶母』は、50歳の新人としてのデビュー作だと思って描いています。今までの連載って、最高8ページなんですよ。対してこの作品は1話24ページで、その3倍。圧倒的に長いし、その分、気合も入っています。今まで背景なんてほとんど描いてこなかったし、ギャグ漫画だからそれで成立していたけど、24枚もあると、ある程度、描き込まないともたないから、私にしてはかなり頑張って描いています。ペンタブがあるとはいえ、基本がなってないからあんまりうまくはないけど、こういうヘタくそな絵でシリアスものって、逆に面白味があるかなって、自分を鼓舞しているところですけど(苦笑)。 次のページ “ほかの人がやらない漫画”が、『凶母』だった 前のページ123次のページ その他の作品を読む