コラム
オンナ万引きGメン日誌
「お父さん、助けて!」顔認証システムで捕まった万引き老女を警察が逮捕しない理由とは?
2021/10/09 16:00
当日の現場は、ショッピングセンターR。関東近県にある比較的大きな駅の前に位置する8階建ての商業施設です。老朽化したビルの立て替えに合わせて、最先端の防犯機器を導入しており、この日は顔認証機器の端末を持たされました。どことなく宮迫博之さんに似ている50代後半と思しき警備隊長によれば、最新機器が導入されたらしく、その精度は高いと解説されます。
「リニューアルオープンしてから日が浅くて、まだ数人しか登録されていないけど持っておいてもらえますか」
「どんな方を登録されているのですか」
「基本は、出禁(出入禁止のこと)にした人たちですね。今のところは、休憩スペースに居座っていたホームレスの人と、店内で大声を出して暴れた酔っ払いくらいかな。おかる(万引き犯のこと)も出禁にするから、もれなく登録しますよ」
以前であれば、出入禁止にされた被疑者の写真は事務所などに貼り出すほか、ファイリングするなどして対応していました。たとえ、そうした人が入店してきても、声をかけることは稀で、見て見ぬふりをしながら遠巻きに見守ってきたものです。ところが昨今は、さまざまな理由を以って迷惑客を遠ざけようとする風潮が垣間見え、徐々に暗黙の了解が通用しない状況が構築されていると感じます。
「出禁の人が入ってきたら、どうしましょう?」
「酔っ払いとホームレスは、制服組がやるから大丈夫。おかるが来たら、おねがいしますね」
聞けば、不審者の入店と共に対象人物の映像と検知位置、それに登録日時や種別までもが瞬時に表示されるそうで、今まで持たされてきたモノより役に立ちそうな気がしてきました。この日の勤務は、午前10時から午後6時まで。ポシェットに顔認証端末を忍ばせ、各階の巡回を始めます。