サイゾーウーマン暮らし100均・雑貨「551HORAI」なぜローカルチェーンのまま? 暮らし 白央篤司の「食本書評」 「551HORAI」「ぎょうざの満洲」は、なぜローカルチェーンのまま? 地元で愛され続ける“生き残り戦略”がすごい! 2021/10/10 14:00 サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman) 「食本書評」白央篤司 時短、カンタン、ヘルシー、がっつり……世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本を、フードライター白央篤司が毎月1冊選んで、料理を実践しつつご紹介! 今月の1冊:『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』辰井裕紀著 『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』PHPビジネス新書 1,210円(税込み)2021年8月31日発行(C)サイゾーウーマン 「その土地ならではの食べもの」というと、郷土料理をイメージされる方が多いだろう。しかし実際に各地を旅してみると、郷土料理は祭りや正月などの特別な日のものであるか、観光用のことが多くなっている。地元の人に「この地域ならではの食べものといえば?」なんて聞き込みをすると、ローカル飲食チェーンの定番メニューを挙げる人は少なくない。 各地で愛されるローカルチェーンは数多くあるが、その中から特に繁盛し、ビジネス上の工夫が見られるチェーンを取材したのがこの本だ。「ローカルチェーンならではの生き残り戦略に注目した」とまえがきにある。著者は『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系、放映当時のタイトル)で7年ほどリサーチャーを務めた辰井裕紀さん。 (C)サイゾーウーマン 「チェーン店というと、どうしても没個性のイメージがある。しかしチェーン店は個性の塊だ」と辰井さんは説く。独自の着眼点をもって商品開発をし、その土地にふさわしい味わいとサービスを考えるローカルチェーン。本書のあちこちから、その魅力に迫りたいという熱い思いが伝わってきた。 「個人商店よりうまいチェーン店はいくらでも存在する。『チェーン店だから』と(レビューサイトに)5を付けるのを躊躇する人は、いますぐ心のブレーキを外そう」なんてくだりには「そうだそうだ!」と喝采を送りたくなった。本書で取り上げられるチェーンのうち、岩手県の「福田パン」、大阪府の「551HORAI」、埼玉県の「ぎょうざの満州」、熊本県の「おべんとうのヒライ」は私も実際に食べたことがあるけれど、近所の人がうらやましくなるクオリティと価格帯だったことを思い出す。 そんな各社の味と経営上の工夫点が本書には詰まっているのだが、私は「ローカルであり続ける理由」を興味深く読んだ。「551HORAI」の「本部としてあらゆる要素をくまなく管理できる上限は60店舗程度」とする潔さ、「おにぎりの桃太郎」が新鮮さを第一に考え商圏を拡大をせず「食べ物屋とおできはおっきくなったらつぶれるぞ」と祖母がよく言っていた、なんて現社長が語るくだり、「そこに行かなきゃ味わえないほうが価値はある」という「福田パン」社長の考えなど、読んでいてとても引き込まれる。留まる勇気、広げない英断というのもあるのだ。 同時に「地元の人々により近く、より親しみやすく」を研究・実践してきた企業の安定感を思う。茨城県の「ばんどう太郎」など県産米を全店で使用し、仕入れ値は相場より高くするというのに恐れ入った。「地域一丸となった成長を考えている」という理想を追求している。こういう取り組みは口コミで住民の間に広がるもの。有事のときに日頃の行いが返ってくる。 本書はコロナ禍における各社の状況と対応も描かれ、その点でも貴重だが、やはり地元客の「好きな店を守りたい」という買い支えをうかがえるケースが多かった。また従業員の勤務体制のホワイト化に取り組む社も書内では紹介されている。おいしさと値段に加えて「どんな企業であるか」ということも、飲食店を選ぶ上での参考にしたいと私は思っている。 さて読み終えて北海道・十勝の「カレーショップ インデアン」のカレーを食べてみたくて仕方ない。そして「551HORAI」の甘酢団子は、食いしん坊なら大阪に行った際はぜひとも試してみてほしい。私はどんなに荷物がいっぱいでも必ず買って帰る。 間違いなくおいしいと断言できる1冊『このひと皿で五感がめざめる、パワースープ』 『このひと皿で五感がめざめる、パワースープ』(C)サイゾーウーマン 今回はもう1冊、料理が大好きでたまらない人におすすめしたいレシピ本をご紹介。『このひと皿で五感がめざめる、パワースープ』(坂田阿希子著、文化出版局/21年2月22日発行、税込み1,760円)はその名のとおり、35のスープレシピと、チキンスープストックの作り方、あまり野菜を使った簡単なスープレシピが3つほどまとめられた本。料理研究家は数多くいるけれど、どれも間違いなくおいしいと私が断言できるひとりが坂田阿希子さんだ。坂田さんのレシピはいつも料理好きの心をくすぐってくる。 「とてつもなく疲れていて、とてつもなくおなかが空いたときも、わたしは迷わずにスープを作る」と前書きにある。良いスープは食材のおいしさが濃縮されて、消化によく、食べやすい。作ってしまえば、パンひとつで食事が成立するのもありがたい。これからの寒い時期に“元気のもと”として、坂田さんのスープを試してみてほしい。まずは基本のチキンスープから。そこからきっとあなたの料理の幅は広がっていく。 白央篤司(はくおう・あつし) フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。 最終更新:2021/10/10 14:00 楽天 強くてうまい!ローカル飲食チェーン ばんどう太郎の女将システム、みんなに知ってほしい! 関連記事 料理研究家だって、料理はつらかった!? 賢人が明かす「飽きずにラクに」続けていくための台所術がすごい『直売所、行ってきます』『めんどうなことしない うまさ極みレシピ』ほか、フードライター・白央篤司が選ぶ上半期のオススメ3冊世界中、所変われど……変わらない!? キューバにパレスチナ、各国の食事作りの“手伝い”をつづる『世界の台所探検』『いつか中華屋でチャーハンを』『バー オクトパス』フードライターが“猛烈にオススメ”する3冊私たちの「食」は、豊かなのだろうか? グルメブーム、日本食礼賛の内側をえぐる『メイド・イン・ジャパンの食文化史』 次の記事 柴咲コウが「変なテンション」だった!? >