『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』終の棲家ではないホスピス「人生の終わりの過ごし方 ~『ダメ人間マエダ』の終活~ 後編」

2021/09/21 17:30
石徹白未亜(ライター)

ホスピスでは死ねないという現実

 今回番組を見ていて知ったのは、「ホスピスは退院する施設」であるということだ。ホスピスは終の棲家であり、ホスピスを出るのは亡くなったときだとばかり思っていた。

 だが、マエダはホスピスの医師から、ずっといることは不可能、原則として2カ月間がひとつの決まりと説明を受けた。実際、マエダ自身も4月28日にホスピスを退院し、自宅で母親に看取られ亡くなっている。これは退院せざるを得なかったのか、それともマエダが家で最期を迎えたいと希望したかは不明だ。

 ホスピスが終の棲家ではなくなったのは、診療報酬の減少が大きいようだ。「緩和ケア病棟から追い出される? ケアの現場に持ち込まれた『連帯責任制』」(※1)によると、診療報酬の改定により長期の入院は診療報酬が減額され、患者の滞在が長引くほど病院経営は苦しくなる。言葉を選ばずに言えば「予定通り短期で死ねないと追い出される」状況にあるようだ。

 マエダはホスピスからの退院時、おそらく痛み止めのためであろう、医療用の麻薬の注入器を体につけていた状態だった。自分の人生の終わりが見え、体力が消失していく満身創痍の状況で「ホスピスの次の生活」を考えねばならないのはきつい。

 天寿を全うしピンピンコロリが理想だが、なかなかそうは逝けないのだ。死ぬことの大変さを思った。


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