知られざる女子刑務所ライフ122

今のムショは老人ばっかり! 90歳の“上級国民”おじいさんに、高齢受刑者をお世話した元女囚が物申す

2021/07/25 16:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)

90歳の収監は「ぜんぜんアリ」

 もうひとつ大きな問題は、おじいさんが有罪でも、「年寄りすぎて収監ナシでOKかも?」ちゅうことですね。いわゆる「執行停止」です。刑事訴訟法第482条は、「年齢七十年以上であるとき」も執行停止できるとしてます。普通は執行停止を受けられるのは、末期がん患者くらいですけどね。

 瑠美は、「禁錮」なら90歳でもOKと思いますよ。懲役は工場で何かを作ったり、調理や洗濯など受刑者の身の回りのことをして、けっこう忙しいのですが、禁錮刑は悠々自適やから。

 それに、ムショの高齢化はどんどん進んでますから、みんなやさしくしてくれますよ。けっこう前から「高齢受刑者のお世話」は、刑務作業のひとつです。

 瑠美が、バブル期に巨額詐欺事件を起こした尾上縫さんのお世話をしていたことは、岩波新書にも出てますし(笑)、あの鈴木宗男先生は、ムショで高齢受刑者のお風呂の介助中に東日本大震災に遭ったそうですし、ホリエモンはトイレのあとお尻を手で拭く(!)おじいさんの世話をしてたそうです。

 あと瑠美は見てないのですが、映画『すばらしき世界』の西川美和監督が「旭川刑務所を取材したら、お年寄りばっかりやった」と書いてたと、編集者さんから聞きました。


 「木工や裁縫の工場内にも、眼光鋭い凶暴そうな男たちは見当たらず、長年の室内作業と栄養管理で小さくしぼんだ青白い老人ばかりが飼いならされたように黙々と作業の手を動かしていた。それともそこにいる人は皆『老人』に見えただけだろうか」とあります。

 今のムショは、普通に老人ばっかりですから。

 ちなみに、おじいさんが入るなら交通刑務所と思いますが、交通刑務所は「交通事故を起こした」だけの人たちですから、リアルヤクザはまずいてないし、規則もゆるいです。弁護士さんとかエリートも普通にいてるんで、「上級国民人脈」も広がるのとちがいますかね。

 人生100年時代ギリギリですが、模範囚で仮出所できたらええですね。


中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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最終更新:2022/10/14 17:45
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