『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』茨城ディープ・ママたちに癒やされる「酒と涙と女たちの歌 ~塙山キャバレー物語~ 前編」

2021/05/31 17:23
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月30日の放送は「酒と涙と女たちの歌 ~塙 山キャバレー物語~ 前編」。

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『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 茨城県北部、日立製作所の企業城下町でもある日立市。商業施設が並ぶ国道沿いに、昭和で時が止まったかのような、簡素な青いトタン張り平屋建てのスナック、居酒屋が並ぶ渋い一画「塙山(はなやま)キャバレー」がある。60年ほど前に誕生してから、現在は13軒が営業中だ。

 「ふじ」の美代子ママは塙山キャバレーの組合長も務めている。30歳で離婚し、店を切り盛りしながら、夫にとられた息子も取り戻したという。疲れた様子で来店した男性客にはハイボールに金粉をあしらって出していた。酒のつまみは会話だと思うと話し、店の様子も楽し気だ。

 「いづみ」には、蓉子ママを慕い酒が飲めないが来店し、コーヒーを飲む客もいる。蓉子ママは別の街でもスナックを繁盛させたやり手だったが、「ここのほうが好きだったんだね」と、40歳で儲けがあまり出ない塙山に移る。

 「めぐみ」は、唐揚げと刺身がお通しで出てくるリッチな店だ。恵子ママは、母親に17歳で芸者の置屋に売られ、死に物狂いで逃げ出し、27歳で塙山キャバレーに流れ着いたという。


 塙山キャバレー最高齢、「京子」を営む82歳の京子ママは穏やかな物腰で、ほかの塙山の店のママたちも、客として訪ねてくるなど慕われており「ママのママ」的存在だ。京子ママの息子の一人は、50代の若さで亡くなったという。息子の内縁の妻だった人とその友人が店を訪ねた際は、焼酎をグラスに注ぎカウンターに陰膳として添えていた。

 かつて塙山キャバレーに店を出していた人も客として訪れる。のぼるは、かつてラーメン店をキャバレー内に出していたが、店の漏電が原因で、5軒が全焼する火事を出してしまう。それにより、塙山キャバレーはかつてあった敷地中央の「島」部分がいまもぽっかりと空いた状態だ。

 のぼるは現在生活保護を受けており、塙山キャバレーで1杯のビールをゆっくりと飲むのを楽しみにしている。火事の負い目もあるのか引きこもり、自殺も考えたというが1杯のビールを糧に、「何もやってねえよりはやることがあったほうがまだいい やることがなかったら気が狂うべ」と近所の草むしりを続けている。

 かつては「その筋の人」がやってくるなど怖い思いをしながら、協力し合い、苦難を乗り越えてきた塙山のママたち。そんな塙山キャバレーにもコロナの影響が直撃する。2月、茨城県独自の緊急事態宣言により、店は午後8時閉店を余儀なくされる。塙山から感染者を出さない、という思いでママたちも、新規客を断るなど徹底した対策を取り、苦しい経営を強いられる。

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