サイゾーウーマンコラム“中学受験”に見る親と子の姿中学受験塾に洗脳されていた私 コラム “中学受験”に見る親と子の姿 中学受験塾に洗脳されていた私……「T学園に入りたいのは、僕じゃなくてママ」息子の涙に目が覚めて 2021/03/28 16:00 鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー) “中学受験”に見る親と子の姿 「親を喜ばせたい」自分より親の意思を優先させる子ども 5年生に上がると、講義のスピードも上がり、塾の宿題も相当な量が出されたという。 「義則はテニスをやっていたんですが、塾から『テニスと受験、どっちが将来に大事だ? お前はT学園に行きたいんじゃないのか?』って迫られて、結局、5年の秋にテニスもやめてしまいました。その頃からですね、義則に謎の湿疹が出るようになったのは。かきむしるので、血だらけになっていることもありました。それにチックの症状も出るようになってしまって」 5年生の頃の義則君は、T学園も十分合格圏内という偏差値をキープしていたのだが、それから徐々に成績が下がっていくようになったそうだ。 「あの頃の私は、塾に洗脳されていたとしか思えません。もう『義則を絶対にT学園に入れなければならない!』ってことしか考えてなかったんです」 そんな6年初夏のある日、菜々美さんに塾からこんな電話があったという。 「義則君が『T学園特訓講座』に来ていません」 義則君は、塾のある駅で降りずに、そのまま電車に乗って、他県にある終点まで行っていたということが判明。夜遅く、自宅に戻って来た義則君に、菜々美さんは怒りをぶつけてしまったそうだ。 「アンタ、どういうつもり? 特訓講座は高いねんで? みんながT学園目指して、頑張ってるのに、こんなことして入れるわけないやろ! もう、受験なんてやめてしまえ!」 義則君はその時、泣きながら菜々美さんに言ったという。「T学園に入りたいのは、僕じゃなくママやろ?」と。 「ショックでした。その通りだったんです。思えば、義則の口から『T学園に行きたい』なんて言葉は出たこともない。私が『T学園に行きたいんやろ?』って言って、頷かせていたんです」 菜々美さんは当時、「私は母親失格」と言って、筆者に相談してくれた。 よくよく聞けば、別れた夫は、「T学園より偏差値や大学合格実績で見劣りする」という中高一貫校の出身。菜々美さんには、一人息子に、元夫よりもいい学歴をつけて、見返してやりたいという心理が働いていたようだ。 これは「中学受験あるある」なのだが、子どもが受験を頑張る理由に「親を喜ばせたい」というものがある。お母さんやお父さんの喜ぶ顔が見たくて、自分の気持ちを殺してでも、親の意思を優先してしまうことは珍しいことではないのだ。 次のページ そして、中学受験から撤退……現在は 前のページ123次のページ 楽天 2022年度入試用中学受験案内 関連記事 中学受験で「特進選抜コース」合格も、3カ月で落ちこぼれたワケ……「入学前にスマホデビューがいけなかった」中学受験ブームに流され、3年間で400万円課金! 「なのに入学先は偏差値48校」「公立でよかった」母の言えない本音中学受験、第1志望の大学付属に「不合格」特待合格狙いも「失敗」……それでも「やって良かった」と母が語るワケ“中学受験恐怖症”になった娘……1月校含め“5連敗”、母が後悔する「言ってはいけなかった」一言「最悪な学校です」中学受験直前、憧れの志望校がネットで酷評! 「本当に苦しかった」掲示板に踊らされた母語る