『おちょやん』解説

朝ドラ『おちょやん』倉悠貴演じるヨシヲは腐りきったヤクザ? 「弟」の名を隠し続けた浪花千栄子の意思

2021/03/13 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

昭和初期は職人さんにもイレズミ人口が多かった

 大きなイレズミが入っていた千代の弟・ヨシヲですが、ヤクザものたちが、仲間意識を高めるべく入れだしたという話が昭和頃から出てきます。ちなみに鮮やかな大きなイレズミは高くつくので(現在でも大きな模様を背中にいれようとしたら、高級車一台分というのが相場)、親分さんが金を負担してやるというケースもよくありました。ヨシヲも、彫り物のお金を親分さんに出してもらっていたのかもしれません。

 ただ、昭和初期において「イレズミ=ヤクザもの」と言い切れるかというと、必ずしもそうではなかったようです。江戸時代に引き続き、職人さんにもイレズミ人口が多かったですからね。

 ドラマでは千代の必死の引き止めにも応じず、彼女のもとを去っていったヨシヲですが、今後も登場はあるかと思います。冒頭でもお話したとおり、千代のモデルである浪花さんが、弟の娘を養女として迎え入れ、家を継がせているからです。つまり、弟とは何らかの関係が続いていったということでしょう。

 ヨシヲには更生を期待したいですよね。今のままでは悲しすぎます。なによりヨシヲの騒ぎに乗じて、いつのまにか仲良くなりすぎている一平と千代についてもいろいろと気がかりですが、ついに一平の二代目・天海天海襲名披露の席で結婚してしまいました。

 これからどうなっていくのか楽しみでもあり、怖くもあり……ウォッチを続けていきましょう。


堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2021/03/13 17:00
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