朝ドラ『おちょやん』リアル人生

『おちょやん』浪花千栄子のリアル人生は「汚点」だらけ!? NHK朝ドラ化は「不可能」なワケ

2020/11/28 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

国民的ドラマといわれるNHKの朝の連続テレビ小説、通称「朝ドラ」。ヒロインがさまざまざな苦難にめげず成長していく物語が根幹にあるドラマだが、どうやら今期の朝ドラは怪しいようで……? 歴史エッセイスト・堀江宏樹氏が、朝ドラ『おちょやん』のヒロイン・浪花千栄子の実像を、自伝『水のように』(六芸書房、1965/現在は朝日新聞出版刊)からひもとく! 前回はこちら

NHK『おちょやん』公式サイトより

前回までのあらすじ

 ダメな父親の元を飛び出して、豚のエサを貪り食べていたところを保護されたり、9歳で大阪・道頓堀の芝居茶屋での労働者として売り飛ばされた「おちょやん」こと浪花千栄子さん。その後、自殺未遂を図るなど苦難ばかりが続きます。

 芝居茶屋での地獄の「おちょやん」生活に見切りをつけ、ダメ父に紹介されたご家庭での女中奉公にジョブチェンジした浪花さんですが、給料がまったく支払われないことに不審を抱きます。勤務先のご家庭にこわごわ聞くと、給与は全額前払いで、ダメ父の手にすでに渡っていたという衝撃の事実が判明! 浪花さんは女中を辞め、衝動的に京都へ向かう列車に乗っていたのでしたーー。

ダメ夫が不倫相手を妊娠させて離婚

 京都の職業安定所で紹介されたのは、いわゆるキャフェーの女給でした。つまり、浪花さんがおキレイだったということでしょうね。

 男性相手のお給仕の仕事で、当初、本当はすけべな店ではないかと浪花さんは警戒していたようですが、そういうわけでもないと知ってからは安心したそうです(笑)。


 キャフェーでは劇団関係者と出会って、劇団の若手女優として、ついで若手映画女優として芸能活動を開始するのですが、どこでも挫折の連続。給与を未払いにされたり、それはさんざんでした。

 若い頃の写真を見たら、どこかボーイッシュな顔立ちにせよ、美人だと思いますよ。しかし、こういう失敗の連続が、彼女に「私は年相応の美女の役など演じるに値しない」と思わせてしまったのかもしれません。

 23歳の時、喜劇役者で脚本家の2代目渋谷天外と結婚しますが、これまたクズ男。金に汚く、家ではDV、家の外には女、女、女。結婚後の浪花さんは渋谷天外作品で、他の女優に断られた役を演じる「便利屋」として主に活動しています。しかし、渋谷が劇団の若い女優に手を出し、彼女を孕ませた時点で、結婚生活は破綻します。

 20代から40代までという、女の人生で一番大事な20年を捧げた渋谷に、浪花さんはこんな裏切られ方をされてしまうのです。

「相手から『僕を信じてくれ』とかいわれたら、関係は黄信号。」


 そんな名言が自伝『水のように』には登場します。ダメ男とわかっていても、浪花さんは情が深いので振り払えないのでしょうか。

Wの悲劇