コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

女官と皇后VS侍従長のバトル開戦!? 皇室の難題「おつとめ」めぐり、宮中が大荒れのワケ

2021/03/06 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

――祭祀ほど厳しく大変なものはない、ということでしょうか……。

堀江 そうです。たしかに第二次世界大戦後、天皇皇后両陛下および皇族の方々の「ご公務」と、「宮中祭祀」は完全に別枠になりました。また、両陛下の「いのり」こと宮中祭祀については、内容がほとんど一般公開されない神聖なものですから、両陛下以外の方は、ほとんど理解できなくて当然かな、とは思いますが……。

 現代は、さすがに多少の変化があるかもしれないのですが、儀式が執り行われるのは、なんの空調設備もないお部屋です。厳寒・酷暑関係なくそこで、何時間も正座のままで、しかも形だけこなすのではなく、精神を集中しての儀式が続くのですね。

――すでに健康不安のあった昭和天皇にとっては、儀式は大変なものであったと想像できます。

堀江 儀式の途中、正座を続けているのが困難になって、前にうつぷしてしまわれるというような“事故”もあったそうです。こういうこともあって、入江侍従長は祭祀より御研究所での学者としての「おつとめ」を重視したところがあります。一種のすり替えですね。学者としての活動も、古来から重視されてきた天皇の「おつとめ」ではありますが。

 「お上(=天皇陛下)はお大事なお方、お祭りもお大事だが、お祭りの為にお身体におさわりになったら大変」という入江侍従長に対し、女官の今城に影響された皇后陛下は「私が(天皇陛下ができないなら、そのかわりに祭祀を)やろうか」とまでおっしゃったこともあったそうです(昭和45年の大みそかの入江氏の日記に書かれた“補遺”より)。

 いくら皇后陛下であったところで、女性が執り行えない儀式というものが、宮中には厳然としてあります。昭和天皇ご本人も儀式を簡略化することに対し、非常に難色を示されたのですが、入江氏の説得を受け入れざるをえなかったのです。

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