老いゆく親と、どう向き合う?

「いくら認知症とはいえ理解できない」母のことが大好きだった父……老人ホームで「母に激しい暴力を振るう」

2021/03/07 18:00
坂口鈴香(ライター)

認知症だから仕方ない? 娘のことを忘れていた義父

 真山さんは一安心したものの、それまで尊敬していた義父に会いたい気持ちがなくなってしまった。

「息子が結婚したので、その報告がてら息子と娘を連れて帰省したのですが、義母のところにはお見舞いに行っても、義父には嫌悪感があって顔を出す気になれませんでした」

 義母に、義父のところにも行ってあげてほしいと頼まれて、渋々見舞いに行った真山さんは、再びキツネにつままれたようだった。

「義父もまた元の穏やかな人に戻っていたんです。義母に激しい暴力を振るったあげく、大好きだった義母に会えなくなったというのに、そんなことは何もなかったかのように穏やかに会話している……本当にあの暴力は何だったんでしょう?」

 ただ、義父は孫娘の顔を忘れてしまっていた。孫息子の嫁だと思っていたという。

「初めて会うような挨拶をしていました。認知症だから、忘れるのは仕方ないです。ただ、昔から義父にとっては息子が一番でした。娘は二番目の子どもだし、女だからだと思うんですが、息子をかわいがる様子とは明らかに扱いが違っていたんです。そんなことを思い出してしまうほど、義父は娘の存在が薄かったんだなと思いました。おじいちゃんのことが好きだった娘がかわいそうになりました」

 義父の心の底にある、女性に対する何か――それが義母への暴力に表れたのかもしれない、ちらりとそんな気持ちにもなる、と真山さんはつぶやいた。

 もうひとつ、義父母のことが落ち着いてから、真山さんが知ったことがある。義姉は義母の様子がおかしくなったころガンが見つかり、体調に不安を抱えながら義父母のもとに通っていたというのだ。

「義父母にはもちろん、夫にも何も言わずに一人ですべてやってくれていたんです」

 結局、真山家の男はハナからあてにされていなかった、と真山さんは肩をすくめて笑った。

坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

記事一覧

最終更新:2021/03/07 18:00
なかよし別居のすすめ
義父の女に対するなにか……ゾクッとくる余韻……
アクセスランキング
  1. 【ダイソー】110円のコレ、洗面台収納に
  2. 【サイゼリヤ】平日ランチ実食おすすめ5品
  3. SUPER EIGHT・大倉忠義、イベントチケットの転売横行! “本人確認”実施でなにわ男子はどうなる?
  4. 【ダイソー】110円「水切りカゴ用ポケット」活用術6
  5. 大量閉店の【ミニストップ】を調査!
  6. 暴露本『ベッカム』3つの話題
  7. 【ダイソー】110円「ブックエンド」洗面台で使う
  8. アラフォー婚活、最後に彼氏に料理したのって
  9. 【ダイソー】110円L型ビニールケース
  10. 後輩にしたいボーイズグループメンバー発表
  11. キンプリ密着の『RIDE ON TIME』レビュー
  12. 丸亀製麺のカフェが行列店になったワケ
  13. 読者をミスリードする「週刊女性」
  14. 【丸亀製麺】渋谷ポップアップストアは盛況も、新商品「うどーなつ」300円にガッカリのワケ
  15. ナイキの入手困難「エア マックス アイラ」、プレ値で購入! ハッとした“とんだ勘違い”とは?
  16. 中村芝翫、愛人と“実家”同棲スクープ以上に驚がく! 「遊ぶ金」めぐるエピソード
  17. 2022年スピ“教祖様”たちの注目動向
  18. 東宝の興収2カ月連続大幅ダウン
  19. INI、新曲が初日売り上げ46.5万枚!
  20. 『テレ東ミュージックフェス』、近藤真彦の『カウコン』事件蘇る! 一方で韓国でブレークの可能性も?