サイゾーウーマンコラム認知症でアル中になった母の介護 コラム 老いゆく親と、どう向き合う? アルコール依存症で認知症の母、被害妄想がひどくなり……「どうしても優しくできない」介護する娘の告白 2021/02/07 18:00 坂口鈴香(ライター) 老いゆく親と、どう向き合う? “「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける” ――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社) そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。 写真ACより 東野晴美さん(仮名・51)は、アルコール依存症で暴力をふるう父親と、東野さんを常に監視する母親との関係に悩んできたが、結婚後はわだかまりもなくなっていた。父親は長年のアルコールがたたり、ほとんど寝たきりになっていたが、晩年に離婚した母親が10年も介護をして看取った。 父親の死後、レビー小体型認知症になった姑を義姉と交代で介護して見送り、一息ついた東野さんだったが、今度は母親が認知症であることがわかる。しかも、アルコール依存症でもあることが判明したのだ。あれほど父親のアルコール依存症で大変な思いをした母親が同じ病気になったことに、東野さんは大きな衝撃を受ける。 (前回:限界を見た姑の介護、それでも「最期まで本当にいい姑でした」と語る胸中とは?) 自分が母親を引き取るしかない アルコール依存症が原因だったのかどうかはわからないが、母親は被害妄想が激しくなった。ものがなくなったと言っては、母親と同居する妹が盗ったと責め立て、妹は精神的に参ってしまった。 東野さんは、「このままでは妹が持たない」「母親は自分が引き取って介護するしかない」と覚悟を決めた。 姑を介護したときに、疲労の極限まで行ったはずだ。ましてや母親とは若い頃の確執もある。施設という選択肢はなかったのだろうか? 「一度、母を1泊だけショートステイに預けたことがあるんですが、やることがなくて別人のようになってしまったんです。頭を垂れて、ただ座っている母の姿がかわいそうで……。母ももう二度と施設には行きたくないと言っていました。母もこれまで頑張ってきたので、最後くらい好きにさせてやりたいと思ったんです」 東野さんのもとにやってきた母親は、週5日はデイサービスに行き、家にいるのは2日間だ。それでも東野さんは、母親と二人でいることが耐えられなくなった。 「家にいる間中、母はずっと私のことを見つめています。私が動くと、母の頭も体も私を追って動くんです」 監視されていた子どもの頃のことを思い出して苦しくなった。「見ないで」と言うと、いかにも見てないというように大げさなアピールをするのも、さらに東野さんを苛立たせた。 酒をやめられない母親は、東野さんや娘の目を盗んで酒を買いに行っては酒を飲んだ。それを見つけて、東野さんは母親を怒鳴り、大ゲンカになる……。 「どうしても母に優しくできない。キツい言葉しか出てこないんです」 母親は妹を泥棒扱いして責め立てたが、東野さんには何も言い返せない。それほど東野さんのことを恐れているのだという。 次のページ 修行と思って母と一緒にいる 12次のページ Yahoo そろそろはじめる親のこと 気になる介護・施設・仕事・お金のこと / 大澤尚宏 関連記事 限界を見た姑の介護、それでも「最期まで本当にいい姑でした」と語る胸中とは?アル中で寝たきりになった父と、10年の介護ーー離婚しても見捨てなかった「母の意地」「長女の私に、とにかく厳しかった」監視する母とアル中だった父――老いた親を前に、娘の本心は「父を助けてください」向精神薬で“廃人”にされた親、老人ホーム施設長のあぜんとする本音老いてから金に執着するようになった母ーーその悲しい理由とは? 「年金で足りない費用」めぐる家族関係