【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

皇后の縁戚が「不敬罪」で逮捕!? 天皇家を揺るがした“新興宗教”スキャンダル【日本のアウト皇室史】

2021/02/06 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

皇后の縁戚が不敬罪で逮捕

 スピ業界だけでなく、軍隊の内部でも、当時の天皇家、そして昭和天皇のあり方に対する不満がマグマのように高まり、噴き出しつつあった……といえると思います。これはまた、次回以降に詳しくお話ししますね。

 島津ハルと、彼女を「神」に仕立て上げた霊媒師・角田つねが相継いで不敬罪で逮捕されたのが昭和11年8月のことでした。

 島津は良子皇后の縁戚にあたる女性ですから、警視庁としても苦渋の判断だったのですが、

「昭和天皇は本当の天皇ではない」
「昭和天皇の弟である高松宮が後を継ぐべきだ」
「昭和天皇は十五年後に崩御なさる」

 などの「神告」を口にして憚らず、そのウワサは島津が女官を辞めてしばらく経つ宮中でも響き渡っていたそうです。昭和天皇の側近だった木戸幸一の日記には、何度も島津ハルの名前と「神告」が登場し、頭を痛めている様子がうかがえます。


――まさか天皇家の身内のような女性を、「不敬罪」で逮捕せねばならなくなるとは思ってもみなかったでしょうね……。

堀江 島津ハルは神がかりになって、信者たちの前で「大正天皇の侍従の霊が現われた」と宣言、「彼は、自分が貞明皇太后(大正天皇の皇后、裕仁天皇の母)の愛人だったと、言っています」とか、高松宮様の「生き霊」が現れ、「私の母は、貞明皇太后ではなく、大正天皇のお手つき女官だ」とか。

乙女の日本史 / 堀江 宏樹