家族のケンカが裁判に発展! 法廷で「茶番」を主張した46歳の息子、「こうやって懲役に行かされる」実例
殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。
【#012号法廷】
罪状:建造物侵入
被告人:N男(46歳)
<事件の概要>
今年5月29日午後2時、東京都A区A駅にあるテナントビルの3階に、非常階段から侵入した被告・N男。彼は2年前も同じく、不法侵入で逮捕されている。ほかに、覚醒剤取締法違反などで前科4犯。
傍聴する前の印象は、「罪状が『建造物侵入』だけ?」でした。「窃盗」や「暴行」、「誘拐」の手段として不法侵入することはあっても、「建造物侵入」が裁判のメインになることは少なく、いわば“おまけ”みたいな罪状なんです。罰金、もしくは示談で済みそうな軽い罪ですし、これだけが問われる裁判をあまり見たことがなく、引っかかりを覚えたので傍聴することに。侵入することだけが目的の犯罪って、一体なんなのでしょう?
背景には、家族の問題がありました。
父親の持ちビル兼“元自宅”に不法侵入した被告
法廷に入って来たN男は、ず~っと裁判官や検察をガンつけたまま。一般人とは思えないその目力は、刑事ドラマの法廷シーンを見ているようでした。どこか韓国の映画俳優マ・ドンソクに似た風貌で、不謹慎ながら「キャラが立ってる!」とワクワクしてしまいます。
侵入したのはN男の父親の持ちビルで、しかもN男が以前住んでいた“元自宅”なのだそう。ざっくりまとめると、家から追い出された不良息子(N男)が、自宅に無理やり戻ったら父親に通報された、という事件。要するに、家族ゲンカですね。
ふてぶてしい態度を崩さない被告は、かなり裁判慣れしている感じ。覚醒剤などで前科4犯(罰金刑4回)だそうで、検察や裁判長からの質問にも堂々と答えていました。というか、「これ、茶番ですから。(自分は)無罪ですから」「法廷侮辱罪で(逮捕されても)かまわない」などと、1人でベラベラベラベラ……。
裁判長も思わず「ここでしゃべられても、記録に残らないから」とダメ出ししていましたが(記録に残らないんだ!?)、N男は「残らなくても結構ですよ。法廷侮辱罪でもかまわない」と、一歩も引きません。さらに、裁判長が「いつまでしゃべるの?」とあきれてもガン無視。果ては「再審請求します!」と最高裁まで争う姿勢を見せ、1人でヒートアップ。あの、まだ第一審が始まったばかりなんですけど!