サイゾーウーマンコラム孤独な青年が起こした「未成年者誘拐」事件 コラム 【連載】傍聴席から眺める“人生ドラマ” “神待ち”で出会った15歳の少女を「引き取って育てる」――孤独な青年が起こした「未成年者誘拐」事件 2020/06/07 20:30 オカヂマカオリ(ライター) コラム傍聴席から眺める“人生ドラマ” 「東京高等地方簡易裁判所合同庁舎」Wikipediaより 殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。 【#009号法廷】 罪状:未成年者誘拐 被告人:O太(25歳) <事件の概要> いわゆる“神待ち”(家出した少女が、その日の食事や宿を無償で提供してくれる男性=神をインターネットで探すこと)をしていた15歳の少女とTwitterで知り合い、ひとり暮らしする自宅に数日間泊めていたO太。少女は無事に保護されたものの、母親が被害届を出し、逮捕された。O太の動機は「ひとり暮らしを始めて、寂しかったので」。 被告が少女の母親に発した「普通じゃない」言葉 大学時代に統合失調症を発症し入院、退院後は自立を目指して3年間グループホームで生活していたO太。非正規とはいえ就労できたため、ひとり暮らしを始めたそう。ただ、孤独感から「女性と暮らしたい」欲が湧き、Twitterで“神待ち”少女を探してみることに。O太が連絡してから6日後にリプライを送ってきた少女と運良く(悪く?)つながってしまったそうです。 朝早く出勤するO太は、少女を自宅に泊めている間、寝ているところを起こさないよう支度したり、職場から「おはようございます」とTwitterのDMを送っていたりしたそう。わいせつ行為どころか、扱いにはかなり気を配っていたことがわかります。 しかし、O太は自責の念に耐えられず、逮捕当日、電話で警察に相談していたとか。ファミレスで警察官と落ち合い、一緒に帰宅したところ、少女はスマホ片手にベッドでリラックスしており、さらに「自分で(ここまで)来ました」と主張。少女は保護されましたが、O太の留守中には、少女と母親がLINEでやりとりしていたこともわかっており、ずいぶん自由に過ごしていたようです。 “どこにでもいる素朴な青年”という感じの被告。ドラマなどとは違い、生で見ると拍子抜けするぐらい“普通”な被告人は多いですが、彼はその中でも特に普通。「さっき寄ったコンビニの店員」だと言われても、納得してしまうほどです。情状証人として登場した父親の弁論も「子どもの頃から優しくて人のいい子でした。拾ったお金を交番に届けたり……」「病気でも真面目に勤務していました」「今後は二度と(犯罪を)繰り返さないよう見守っていきたい」と、ほぼ常套句でしたね。それだけに、O太の「寂しかった」という動機が、とても身近に感じられます。 ただ、少女の母親に「娘さんを引き取って育てるつもり」といったメッセージを送っていたり、少女と暮らす前提で「家賃の一部を(少女の母親に)負担してもらい、フラットな付き合いをするつもり」と考えていたことが明らかになると、「ちょっと普通じゃないな」とも思いました。O太は思い込みが激しいタイプなのでしょうか。 次のページ “オトコ”を家に連れ込んでいた、母親への疑問 12次のページ 楽天 誘拐<新装改版> 関連記事 宗教団体の内部で起きた「窃盗未遂」事件――“手かざし”では救えなかった、50代女性の深い闇認知症の女性から1900万円奪った訪問介護員――「家族に相談できない」一人で抱えた悩みとは自宅を燃やした弟は、ADHDだった――「もっと早くわかっていれば」兄が法廷で語った後悔アラサー独女、5つの罪で逮捕――裁判で明らかになった「移住した離島の特殊な環境」とは“ハプニングバー”好き有名人と不倫――「紅白歌手・Xに会える」と信じたアラフォー女の「ストーカー裁判」