朝ドラ『おちょやん』リアル人生

『おちょやん』浪花千栄子のリアル人生は「汚点」だらけ!? NHK朝ドラ化は「不可能」なワケ

2020/11/28 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

これをどうして朝ドラにしようとしたのか?

 朝ドラの『おちょやん』も、最終的には本業(力をより入れているという意味で)は旅館の女将、芸能活動はパートタイム女優として活動する浪花さんが描かれていくはずです。とある新興宗教に入った、みたいなところはカットされるかな、とは思いますが(笑)。

 以上、駆け足で見ていっただけでも、『水のように』に書かれた浪花さんのリアルなヤバさ、つらさ、ご実感いただけましたでしょうか。「私の記憶はドス黒い汚点」と書いているとおり、こりゃホントに「ドス黒い汚点」の連続だ、朝ドラの原案にもならないな……と思いました。

 『水のように』のカバーは浪花さん本人の装丁で、愛らしい千代紙が使ってあるのですが、それも「惨めだった子ども時代に捧げたく思った」という趣旨のコメントがあって、「ヒエッ」と胸を突かれる思いになりました。

 崩壊家庭、児童労働、ブラックすぎる職場、繰り返される自殺未遂、夫のDV、離婚、負け癖……そんな女の物語。これをどうして朝ドラにしようとしたのか。夜10時から水野美紀さん主演でやるべき内容ではないのか……などとも思ってしまいました。

 ハートブレーキングな「ドス黒い汚点」の連続が、いかにハートウォーミングな家族の物語に仕立て直されていくのか。『おちょやん』、これは必見ですがなー!


堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

記事一覧

X:@horiehiroki

原案監修をつとめるマンガが無料公開中。「La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~」 最新刊は『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)

最終更新:2020/11/28 17:02
Wの悲劇
三田佳子の「女優女優女優!」は『Wの悲劇』でどうぞ