コラム
朝ドラ『おちょやん』リアル人生

『おちょやん』浪花千栄子のリアル人生は「汚点」だらけ!? NHK朝ドラ化は「不可能」なワケ

2020/11/28 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

 さて、女優として円熟期の浪花さんの足あとを追うとしたら、映画を見ることをおすすめします。”アマプラ”にはなかったですが、DVDのレンタルは比較的容易でした。しかし『暖簾』『夫婦善哉』『近松物語』などなど見てみたところ、彼女が演じているのは実年齢より30歳以上の老け役ばかり。

 つまり、老け役専門の“ババア女優”なんですが、どうしてそんな道を歩んでしまったのでしょうか。

 顔立ちは美人なんだから、本当なら主役を狙ってもおかしくはないのに……。もしかして、浪花さんには「負け癖」がついてしまっていたのかもしれません。「女優、女優、女優、勝つか負けるかよ!」的な戦いに挑んでいくだけの、気力がなかったのかもしれません。

 30代の浪花さんを悩ませたのは、こうしたつらい過去によって、「悲しみのときには素直に泣ける神経と、楽しいときはくったくなく笑える神経」が自分から失われているという事実でした。当たり前のように笑って、泣ける自分が失われてしまっていたのですね。それを「修養」によって取り戻そうと努めなくてはならないほどだったそうです。

 そして女性の人生で大事な役割を演じるであろう、父親と夫という二人の男性から、浪花さんは酷い目に遭いました。こういうのって、自己肯定感を大きく左右するんですよね。

 浪花さんはこういう女性ですから、離婚もダメージがでかく、またもや自殺しようとしてたら(何回自殺未遂のシーン出てくるねん! というレベル)、かなり年下の名女優・京マチ子さん(1924〜2019)から「死んだらだめ。あなたが生きて女優として成功して、元・夫を見返してやるしかないのよ」などと諭され、生きる気力を回復。

 あとは名脇役として出世、現金をためて、京都に奇跡的に見つけた良い土地に旅館「竹生(ちくぶ)」を建て、自宅を併設。もし女優業がうまくいかなくなっても、なんとか生きていけるように……と保険をかけました。これで初めて、人生で安心を手に入れることができたのだそうです。

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