コウケンテツだって、ごはん作りはしんどい!? 料理研究家が「手料理=愛情のバロメーター」説をバッサリ、「家事の理不尽」を説く意味
日本における家事料理はなぜ大変になりがちなのか?
・日本の家庭料理に求められるレベル&スキルが高すぎる
・栄養も、彩りも、品数もというプレッシャー
・ワンオペの多さ
・家事料理はマルチタスクであること
・デリやお惣菜、冷食などに頼ってはいけないという思い込み
といった分析が、実にわかりやすく、語りかけるようにつづられていく。このあたりを読むだけでも、家事にしんどさを抱えている人はきっと気持ちが軽くなると思う。料理研究家でもそう思うんだ、と。
私がうなったのは、手料理は愛情のバロメーターではなく、「手料理=余裕のバロメーター」ではないか、という表現。また「家事は『やっても褒められないけど、やらないと文句を言われる』という理不尽な作業」というくだりには、首がもげるほどうなずく人が多いと思う。
家事としての料理って、やり始めの頃はバランスよく、できるだけ手作りして、見た目もきれいに、副菜もしっかり……と、とかく理想を追い求めがちなもの。理想的な食事作りを毎日毎日、休みもなく、家族の協力や理解もなしに続けていけるわけもない。そんな現実とどう折り合いをつけていくか、本書はコウさんなりの実践記録でもある。
洗い物をどう減らすか。1日3食ちゃんと食べなければいけないのか。栄養は毎食必ず整えなければいけないのか。そもそも手料理でなくては、ならないのか? “我が家なりの在り方”というものを、コウさんが探していく。
プロの料理研究家だって、料理がしんどいこともある。したくないこともある。そうハッキリと物言えるのは、なかなかいい時代だと私は思う。
自己表現としての料理から、「料理がしんどい」という人の気持ちに寄りそうようなレシピを作ることに、現在コウさんはやりがいと意義を感じているようだ。彼がこれから発信していく料理が、楽しみ。
白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に『 自炊力』『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』など。