白央篤司の「食本書評」

「韓国風なすごはん」はぜひ試して! 人気の料理研究家、重信初江のレシピ『味付けご飯とおみおつけ』

2020/09/15 18:00
白央篤司

時短、カンタン、ヘルシー、がっつり……世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本を、フードライター白央篤司が毎月1冊選んで、料理を実践しつつご紹介!

今月の1冊:『味つけご飯とおみおつけ』著者・重信初江

東京書籍、1,500円(税別)2020年7月30日発売 A5判

 日本のごはんと味噌汁って、自由だなあ………!

 本書を手に取って、まずそう思った。炊き込みごはんや混ぜごはんなどの「味つけご飯」と、味噌汁が45品ずつ、計90品が春夏秋冬のうつろいに応じて紹介されていく。定番のものあり、意外性に富むものあり、なんとも奥行きのあるレシピ集なんである。

 トップバッター、春のごはんとして紹介されるのは「豆ごはん」、旬のグリーンピースの炊き込み。それと対になるのは、やはり旬のあさりの味噌汁だが、著者の重信初江さんはここに豆苗を組み合わせる。やってみればアサリのコクと豆苗の香りが好相性、初体験の味わいとなった。同じく春野菜のアスパラはハムとカマンベールチーズと一緒に混ぜ込まれ、黒コショウをパラリで完成。「チーズをごはんに!?」と思ったが、やってみると……あら、うまいじゃないの。ピラフ的というか、ごちそう感あふれる一杯になる。

 著者の重信さんは、現在最も活躍している料理研究家のひとり。服部栄養専門学校を卒業、織田調理師専門学校で助手として勤務の後、料理研究家のアシスタントを経て独立。テレビ、雑誌、イベントと各方面からオファーが絶えない人だ。その人気の理由として私は、


・レシピの明快さ、作りやすさ
・ちょっとした意外性

の2点を思う。重信さんのレシピというのはいつも潔い。「この料理に必要なものはこれ。これだけです」と言い切られる気持ちよさがある。「塩コショウ 適量」「醤油 大さじ1弱」といった幅のある表記が少なく、すっきりしてて実に作りよい。

 もちろん全然ないわけではない。今回の本でも「七味唐辛子(好みで)」「昆布 4~5cm長さ」「塩、黒コショウ 各適量」といった表記はあるけれど、頻出はしない。料理慣れしていない人は、選択の幅があるほど迷いも生じて、作りにくくなるもの。なるべくしっかりと道筋を示してあげたい、という思いを感じるのだ。

味つけご飯とおみおつけ