SEVENTEEN「HOME;RUN」は「Jazz」を知るとさらに楽しい! MVの世界観と音楽ルーツを解説
1920年代、ニューヨークはヨーロッパから物理的に近かったこともあり、オペラやミュージカルといった芸術が輸入され、盛んに上映されていました。音楽業界が集中していたこともあり、鉄道の発達なども手伝いシカゴからニューヨークへミュージシャンが移動します。ニューヨークでは100組ほどが踊れる大きなダンスホールがあり、会場のダンスミュージックとしてジャズが演奏されました。大きな会場なため、今までの5~7人程度のバンドでは音が小さく、必然的に人が増えていきます。同じ楽器が複数人配置されるようになり、これがビッグバンドとなります。
■Duke Ellington & His Washingtonians: East St. Louis Toodle-Oo (1927)
1930年代はラジオが普及し、実際の生演奏を聞きに行けない人たちもたくさんの人たちがジャズに触れることとなります。先述のDuke EllingtonオーケストラやBenny Goodmanオーケストラ、Glenn Millerオーケストラ、Count Basieオーケストラなどが人気を博します。
■Benny Goodman Orchestra – Sing, Sing, Sing (1937)
シカゴ・ジャズの時に紹介したとおり、スウィング・ジャズはその文字の通り「スウィング」というリズムのことを指すのはもちろん、ジャズの演奏スタイル・ジャンルとして指す場合にも使います。「swing」の本来の言葉の意味は「揺れる」「振れる」で、バットのスウィングやゴルフのスウィングなどがそうです。
まず前者の「スウィング」についてですが、ジャズ特有のリズムの「ノリ」のことを表す言葉として、「スウィング」という言葉を使います。ジャズという音楽の特徴である「躍動感」や「ノリ」を表現する時に、「スウィングする」「スウィングしている」というように使われます。スウィングの説明の仕方は人によってさまざまですが、文字で表せる範囲でざっくりと説明すると、3連符の123、223、323、423という8部音符の「タタタ」を「タァタ」とリズムを取り、さらに後ろのタにアクセントを付けます。ちなみに間が抜け落ちる「タッタ」になると「シャッフル」のリズムになります。
丸を書いてそれを1拍に見立て、どこで取るとイーブン、スウィング、シャッフルと説明する方もいますが、個人的にこの方の説明がわかりやすかったのでまだピンと来ていない方は参考にしてみて下さい。
当時の有名曲に「It Don’t Mean A Thing (If It Ain’t Got That Swing)」(スウィングしなけりゃ意味がない)という曲があり、ここでいう「スウィング」はこの「ノリ」の意味で使っていることがわかります。
■Duke Ellington – It Don’t Mean A Thing (1943)
私のTwitterを見ている方は、よく「グルーヴがある」 という表現を見ると思いますが「スウィング」 とほぼ同じ意味のものと思って大丈夫です。 もう少し細かく説明すると、「グルーヴ」 はどんなジャンルにも使えるものですが、「スウィング」 はジャズというジャンルの中でのグルーヴ感、 というイメージでしょうか。これはあくまでも私の解釈であり、「 グルーヴ」についても個々人でこれはグルーヴしている、 していない、という感覚が違うため一概には言えない概念です。
「スウィング」 という感覚を掴むのが難しい方もいるかもしれないですが、 Jazzy Hiphopのこの曲を聞けば「ハネる」 という感覚はわかってもらえるのではないでしょうか。これが「グルーヴ」です。
■Jung Jin Woo(정진우) – MOVIE (Feat. Rohann)
後者の「ジャズの演奏スタイル」としての「スウィング」という言葉についてです。
世界恐慌が回復した1935年以降、ニューヨークを中心に急速に白人がリーダーのビッグバンドが台頭してきました。それから1940年代中頃までの間の、ビッグバンドとボーカルを迎えたジャズの演奏スタイルを「スウィング」といい、「スウィング・スタイル」や「スウィング・ジャズ」と呼ばれています。
「スウィング・スタイル」のジャズは大衆化したダンス・ミュージックとしてラジオを通してアメリカ全土に放送され、一挙にポピュラー・ミュージックとしての地位を獲得していきました。演奏スタイルとしては、ビッグバンドという楽器構成上、譜面による演奏が行われるようになりました。レコーディングやラジオ放送、ダンスのバックミュージックなど、その時々の要求によって曲の長さを調節するためや、毎回曲の演奏時間が同じ長さになるように編曲(アレンジ)することが必要だったからです。
シカゴ・ジャズ時代にベースとして使っていたチューバがコントラバスに変わったと説明しましたが、この部分はコントラバスで定着します。またドラムがそれまで単独で大太鼓、小太鼓、シンバルといった編成だったものが、ドラムセットが発明され1人の重要なパートとして確立しました。
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