『アメリカン・セレブリティ―ズ』著者インタビュー

BTS、こんまりも包容する『アメリカン・セレブリティーズ』――海外セレブウォッチャーが語る、“熱狂”の理由

2020/09/19 17:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman
『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

 人気と実力を兼ね備えながらも、長らくオスカーに振られていたレオナルド・ディカプリオ、キャリア初期にはレコードレーベル幹部に見向きもされなかったものの、2019年には「最も裕福な女性アーティスト」となったリアーナ。

 20組のセレブリティのキャリアと、ショービズ界及びアメリカ社会の変遷を追った『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)。著者は、さまざまなカルチャー/音楽サイトでセレブの魅力を解説するライターの辰巳JUNK氏だ。アメリカでキャリア形成し始めたセレブだけでなく、BTSや近藤麻理恵(こんまり)らも取り上げ、多様性や社会正義を実現するために大きく変わりつつある今のアメリカを読み解くことができる。その鋭い分析を支えるのは、辰巳氏の圧倒的な知識量とリサーチ能力。彼女にとってセレブを追いかける魅力とはなにか? 今回、リモートで話を聞いた。

――辰巳さんには、サイゾーウーマンでもこれまでに米エンタメ対談で登場いただいていますが、会話の端々からすさまじい知識量を感じます。そもそも海外セレブを追いかけるきっかけはなんだったのでしょうか?

辰巳JUNK氏(以下、辰巳) ちょっと記憶があいまいで。というのも、2000年代の頃からインターネットが大好きだったので、ウェブニュースを見ているうちに自然とセレブリティの沼にはまっていった感じなんです。

 興味深かったのは、アメリカのメディアでセレブリティのゴシップや言動が「ポップカルチャー」として真剣に論じられていたことです。たとえば、2000年代には、人気セレブが出産した場合、大手娯楽誌「People」の表紙で写真を公開することが定番でした。しかし、2010年代に入ると、ビヨンセやカイリー・ジェンナーを筆頭に、スターが自身のインスタグラムで子どもを初公開する習慣が根づきました。


 この背景には、ソーシャルメディアの台頭と旧来メディアシステムの凋落、それに従ったビジネスモデルの変化が見て取れます。日々供給される「セレブニュース」は、ある種「無くてもいいもの」として生活者の日常に馴染んでいるからこそ、社会環境や世論の変化が即座に表出したりする面白さがあるかな、と。

――辰巳さんの執筆する記事は、ゴシップ要素や経済、社会背景にまで踏み込んだ多層的な記事が多いですね。読者の反応から、日本ではどういったセレブ、どういったニュースに興味を持たれていると感じますか?

辰巳 ウェブ媒体の場合はさまざまな要素が関連してくるので、固有の名前を挙げるのは難しいのです。体感的には、フォーカスするトピックも重要かもしれません。ほんの一例ですが、ダイバーシティや経済格差といったイシューは日本でも関心が持たれていますよね。最近好評をいただいた記事でいうと、たとえば「アメリカの女性ポップスターはフェミニスト宣言する人が多いように見えるけど、昔からそうだったのか?」と探る企画。(同記事中で触れる)ビヨンセやテイラー・スウィフトの新作には興味がないけれどフェミニズムや「芸能人の政治的発信」問題への関心は持っている方々……つまり「米国大衆娯楽のファン層から離れた読者層」に多少リーチできたのかなと。こうしたイシューを扱うバランスは常に悩むところですが、最終的には、「紹介される表現者やコンテンツへの興味が増す記事」というのが理想です。

アメリカン・セレブリティーズ