『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』引きこもりがあぶり出す、それぞれの問題「父と息子とはぐれた心 ~引きこもった僕の1年~」

2020/07/27 19:17
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月26日は「父と息子とはぐれた心 ~引きこもった僕の1年~」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 キタノ家の長男、ヨウヘイ(24歳)は大学卒業間近に突然、自宅に引きこもりだす。真っ白な顔でゲームに没頭し、昼夜逆転の生活を繰り返すヨウヘイを前に困り果てた両親は、富山市にある自立支援施設「はぐれ雲」に息子を預ける。

 「はぐれ雲」では引きこもりや不登校を経験した10〜40代の男女が、ひとつ屋根の下で暮らし、就労訓練などを受けながら自立を目指している。最初の頃、ヨウヘイは、はぐれ雲でも無気力や不機嫌さを隠さなかったが、徐々に集団生活に慣れていく。1年後、両親との面談において、ヨウヘイの顔はまだこわばっており、親子仲は「大改善」とまではいかないが、当初は無視を続けていた親からのLINEにも返信するようになる。はぐれ雲の仲間内では笑顔を見せたり、ヨウヘイは大きく変化していた。

父と息子だけの問題だろうか?

 ヨウヘイの両親は、子どもの進路や教育に強く介入する過干渉な父親と、子どもに過保護な母親という「両親そろって過剰」なタイプに見えた。今回のタイトルは「父と息子とはぐれた心」であり、父親と子の葛藤をメインに扱っていたが、私には母親にも、ヨウヘイを引きこもらせた要因があるように思えた。

 この父親と母親は方向性は違えど、ヨウヘイから「考える機会」を奪っている点では共通しているようにみえたのだ。父親は、ヨウヘイが自ら進路を考える機会を奪い、母親はかいがいしく面倒を「見すぎる」ことで、ヨウヘイが考えて動く機会を奪っているように思える。


 ヨウヘイははぐれ雲で過ごした1年間で、無気力でまっすぐ立てずいつも上体がフラフラとしていて、24歳なのに精神年齢が12歳くらいに見える若者から、30kgの木を抱えて運ぶほどの体力と、仲間の前では快活に笑い、地元の人とも交流する若者にまで変貌を遂げる。はぐれ雲での集団生活や、農作業の手伝い、地元の人とのふれあいなども大きかったと思うが、はぐれ雲で行った毎日の「家事」が果たした役割が特に大きかったのではないだろうか。

自分の機嫌は「家事」でとる