サイゾーウーマンカルチャーインタビュー『愛の不時着』北朝鮮目線5大シーン カルチャー 李銀河氏インタビュー【前編】 『愛の不時着』北朝鮮ウォッチャーの心に響いた5大シーン! リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)のキスシーンを“北から目線”で考察 2020/07/23 18:30 サイゾーウーマン編集部 インタビュー その3:舎宅村の奥様たちの“友情”に感動! 「キムチ戦闘」は実際にある!? ジョンヒョクが暮らす舎宅村では、大佐の妻であるマ・ヨンエ(キム・ジョンナン)を中心に奥様たちが結託。一緒にキムチを漬けたり、洗濯をしたり、ヨンエの誕生日を祝ったり、はたまたセリのために飲み会を開催することも。 李 舎宅村の奥様たちのシーンは、どれも大好き。飲み会のシーンも良かったですが、夫である大佐が逮捕され、ヨンエが孤立してしまったとき、奥様たちが自分たちの危険を顧みず、薪や食べ物を運んで支えるというシーンはその友情に感動しましたね。北朝鮮の人々の暮らしぶりは、海外からはわからないだけに、「ドラマで描かれたような人間臭い交流をしているのか?」と思った人もいるかもしれませんが、そこはほかの国と変わらないと思います。脱北者の方の手記を読むと「最初は冷たかったお隣さんに贈り物をしたところ、めちゃくちゃ優しくなった」なんて、非常に人間臭いエピソードもつづられているので(笑)。 あと、北朝鮮の田舎では、ドラマで描かれたように「みんなでキムチを漬ける」ことはあるそう。朝鮮中央テレビのニュースでは、たまに「今年もキムチ漬けが始まりました」と伝えられています。あのシーンで、少尉の妻である人民班長のナ・ウォルスク(キム・ソニョン)と、少佐の妻である美容師のヤン・オクグム(チャ・チョンファ)がセリの元を訪ね、みんなでキムチを漬けることを「キムチ戦闘」と言っていましたが、北朝鮮では「田植え戦闘」とか「稲刈り戦闘」とか、何にでも「戦闘」とつけるので、実際に言っていると思いますよ。北朝鮮は食糧難の問題があるため、食物を作るのも命がけの「戦闘」なんですね。 その4:ソ・ダンがク・スンジュンに恋をしたのは「北朝鮮が男尊女卑の国」だから? ジョンヒョクの婚約者ソ・ダン(ソ・ジヘ)は、留学先のロシアから北朝鮮に帰国。平壌でデパートを経営する母コ・ミョンウン(チャン・ヘジン)とともに、結婚話を進めるが、ジョンヒョクとセリの仲に嫉妬心をたぎらせる。そんな中、セリの元婚約者である詐欺師ク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)と親密な関係になっていく。 李 ダンはプライドが高くて、でも純粋で一途な面が魅力ですよね。お母さんもそうですが、“強い女性”という印象で、実際の北朝鮮女性も“強い”んですよ。ただその半面、北朝鮮は、日本以上に男尊女卑の思想が強い国なので、夫婦間においても、やはり旦那さんのほうが偉ぶっていて、最終的に奥さんは旦那さんの意向に従う傾向にあります。そんな中、女性を丁重に扱う英国紳士風の振る舞いをするスンジュンに出逢い、ダンがクラッといってしまったのはよく理解できます。男性が女性にひざまずくなんてことは、北朝鮮ではあり得ないですから。 また、ダンについては、登場シーンの華やかなファッションにも注目が集まっていました。しかし、北朝鮮の女性はあそこまで派手な服は、持ってはいるかもしれませんが、表立っては着ないかなという印象。後半でダンは、コンサバな白のスーツを着ていましたが、あれは北朝鮮のファッションっぽいと思いましたね。 次のページ その5:中隊員たちが韓国で見せた仲間意識……「北緯38度線」を越えるという意味 前のページ123次のページ 楽天 愛の不時着 オリジナル・サウンドトラック 関連記事 韓国映画『タクシー運転手』異例の大ヒットがあぶり出した、「光州事件」めぐる国民の怒りと後悔韓国映画『ミッドナイト・ランナー』での「朝鮮族」の描かれ方と、徹底的「偏見」の背景とは韓国映画『レッド・ファミリー』に見る、北朝鮮スパイの描かれ方の変遷とその限界難解といわれる韓国映画『哭声/コクソン』、國村隼が背負った“韓国における日本”を軸に物語を読み解く韓国映画『パラサイト 半地下の家族』のキーワード「におい」――半地下居住経験者が明かす“屈辱感”の源