“中学受験”に見る親と子の姿

小6で中学受験「撤退」まで視野に……「ご褒美を欲しがる」息子に、母親がブチ切れたワケ

2020/05/10 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACからの写真

 中学受験生を持つ親御さんを悩ませる問題に「ご褒美で釣ることの是非」がある。例えば、「テストで●点以上取ったら、ゲームを買ってあげる」といったものがそれに当たるが、私の結論を先に言えば「釣れ!」だ。人間は「鞭」ばかりでは働き続けることができない生き物、適度な「飴」は必要でしょうという考えからだ。

 もちろん、子ども自身が勉強の楽しさを知り、自発的に学習し、成績を上げ、見事、志望校合格となれば一番よいとは思う。しかし、このようなお子さんは極めて稀である。ならば、どうするか? 「ご褒美作戦GO!」だ。ただし、釣り方にもコツがある。

 米ハーバード大学のローランド・フライヤー教授が行った大規模実験に根拠がある。約3万6,000人の児童・生徒を、「学力テストの成績がよくなったらお小遣いをあげる」という「アウトプット(成果)」に対してご褒美を与えるグループと、「本を読んだり、宿題をしたらお小遣いをあげる」という「インプット(投入)」に対してご褒美を与えるグループに分けて、それぞれの学力向上を調査したのだ。結果は、アウトプットよりインプットのほうが学力向上に効果ありだったという。

 識者たちはこの結果をもとに、概ね下記2点について「ご褒美が子どもの学力向上に有効的」と解説することが多い。


1.アクションを起こしやすいもの
 「本を読み終える」だけでご褒美がもらえるという単純な工程は、子どもにわかりやすい。逆に「成績を上げる」ということは、複雑な工程を経るものであると同時に、そもそも「やり方」がわからないので、挫折を招きやすい。

2.短期でご褒美にありつくもの
 「成績が上がったらご褒美」というのは、ご褒美にたどり着くまで、大抵の場合、時間がかかる。学力テストや学期末の成績判明には少し時間がかかるからだ。反対に「本を読んだらご褒美」であれば、子どもは、すぐにご褒美にたどり着くことができるので、モチベーションも上がる。

 親はつい「今度の模試で偏差値が50を超えたら、誕生日にゲーム機を買ってあげる!」という約束をしてしまいがちだが、この実験結果によると、「1時間、この問題を解いて自分で丸付けしたら、すぐにお菓子をあげる」と約束するほうが効果的というわけだ。

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