サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「VERY」の「ママになれた瞬間」企画の息苦しさ カルチャー [女性誌速攻レビュー]「VERY」5月号 「VERY」出産と女性へのメッセージを台無しにする、「ママになれた瞬間」企画の息苦しさ 2020/04/11 19:00 中崎亜衣 女性誌速攻レビューVERY “ママになれたあの瞬間”から滲み出る、母性の呪い 吉川氏のインタビューから数ページ進んだ先にある企画「私がママになれた、あの瞬間。」を見てみましょう。リードには、「出産した瞬間から『ママ』の肩書を授けられるのに、なかなか自分の気持ちがそれについていかない……。そんなギャップを感じている人は意外と多いようです。『ママ』になるってどういうこと?」との説明があり、実際に0~4歳の子を持つ読者たちの“ママになれた瞬間”エピソードが紹介されています。 独身時代は面白いと思わなかった『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)を見て毎回号泣、2歳娘からの「ママごはんおいしかったありがとう」に泣けた、自分が抱っこするとピタッと泣きやんだ、目に映る全ての子どもが可愛いと思える、一人時間に子ども服を買い漁った、などなど。 登場するママたちのエピソードや気持ちを否定するつもりはありませんが、ただ、これらのエピソードって“ママになれたあの瞬間”という言葉でしか表現できないものなのでしょうか? 同じようなエピソードや気持ちを持つ“パパ”がいても、おかしくないのでは? という疑問も湧きます。 筆者(5歳児の母)も出産後、感傷的になることはあったし、出産前と考え方が変化した部分もあるように思います。ただ、それらが “ママになれたあの瞬間”だったかというと、正直よくわかりません。そもそも“ママになれたあの瞬間”なるものが自分にあったのかどうかも、あやふやです。 小児科で「お母さん」と呼ばれ、「ああやっぱそういうふうに呼ばれるんだ」と思ったことは覚えているけど、それは “ママになれたあの瞬間”というわけではないような……。子どもが不慮の事故で亡くなったニュースに悲しみを感じ、「もし自分の子だったら」と考えてゾッとするようになったけど、そのことを“パパ”になった男友達に話したらめちゃくちゃ共感されたから、“ママ”限定の話ではなさそう……。 と、こんな具合です。産んだら育てるしかないですし、365日顔を合わせるので、我が子に対する“責任”や“愛着”はありますが……。 3名の有識者たち(宋美玄氏、黒川伊保子氏、Lily氏)による、それぞれの見解も紹介されています。見出しの「産んだその日から、すぐにママになれるなんて幻想です!」という言葉に安心感を覚える読者もいるでしょう。しかし、3名の見解を読んでいくと、むしろ息苦しさを感じる人もいるのでは? と不安がよぎります。 例えば、産婦人科医の宋氏は「一人で背負いこまず父親としっかり分担し、『母親』以外の自分の顔も大切にして、気楽に育児してくださいね。いつか『私もお母さんになったなあ』と思える日は必ず来ますので」と語ります。無論、一人で背負い込まず気楽に育児ができるのはいいことでしょう(それが可能な環境の人ばかりではありませんが)。しかし、「母親」の肩書に気持ちがついていけず苦悩している人にとっては、「必ず来ます」と言われても気が遠くなりそうな……? 大前提として、「『私もお母さんになったなあ』と思える日」、すなわち“ママになれた、あの瞬間”は、育児に必要不可欠なものなのでしょうか? そんな疑問が拭えませんでした。 さて、「VERY」では先月号から、カバーモデル・矢野未希子による連載「今月の“いい妻”みっこ(ハート)」がスタート。夫との出会いと馴れ初めがつらつら綴られているという、読み応えのないエピソードに終始した先月号と同様、今号もまた、夫から2度プロポーズをもらったというエピソードがつらつら。期待を上回るほどのどうでもよさに、逆に衝撃を受けました。 (中崎亜衣) 前のページ12 最終更新:2020/04/11 19:00 楽天 セブンネット VERY (ヴェリィ) 2020年 05月号 [雑誌] 矢野の話、どーでもよすぎて屁こいたわ 関連記事 「VERY」教育虐待・不妊を語るウラで、カバーモデル・矢野未希子の“いい妻”連載がツラすぎる!OLには許されず、ママには許される!? 「VERY」に見る“自分へのご褒美”観“頑張るママ”にモヤモヤ!? 「VERY」のスケジュール特集に感じた余裕のなさ「VERY」伝説の企画「妻だけED」メンバー再集結! 「妻は理解してる」という勘違いの罠「女子」という言葉をさらりと使う――「VERY」ママの分析記事から見えた、読者たちの顔 次の記事 『グレイテスト・ショーマン』DVDプレゼント >