ク・ハラさん、兄が「リベンジポルノ裁判」に言及……「女性だけじゃない」被害の実態とは?
昨年11月、28歳という若さで、自ら命を絶ったKARAの元メンバー、ク・ハラさん。自宅には「自分を愛せなくてごめんね」といった遺言らしきメモが見つかり、ハラさんのファンは大きな悲しみに暮れ、SNS上には多くの追悼の言葉があふれた。
そんなハラさんは生前、深刻なうつ病を患っていたという。その原因の一つとなったのが、元交際相手チェ・ジョンボムとのトラブルなのではないか言われている。ハラさんは、チェから暴行を受けるとともに、「性的動画」をネット上に流出させるという“リベンジポルノ”の脅迫にあっていたというのだ。この件は裁判が続いており、ハラさんの兄が先日、あらためてチェへの厳しい処分を要請したことが報じられた。
リベンジポルノは日本でも社会問題となっており、2014年には、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称・リベンジポルノ防止法)」が成立。被害者のほとんどは女性だというが、サイゾーウーマンでは、男性の被害が「ない」のではなく「可視化されないのではないか」という疑問を抱き、『リベンジポルノ―性を拡散される若者たち』(弘文堂)の著者であるメディア学者・渡辺真由子氏に取材を行った。ハラさん側が起こした裁判の行方が注目され、リベンジポルノへの問題意識が高まる中、いま一度この記事を掲載する。
(編集部)
(初出:2018年11月3日)
ジャニーズのベッド写真も続々流出……男性のリベンジポルノ被害はなぜ「軽視」されるのか?
元交際相手や元配偶者への報復として、相手のプライベートな性的写真や映像を不特定多数に公開する“リベンジポルノ”。2014年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称・リベンジポルノ防止法)が成立してから、週刊誌に掲載される、芸能人の「ベッド写真」「全裸写真」の扱いも、徐々に変化している。
例えば、以前であれば、実名かつ顔などに何のモザイク処理も施されず掲載されていたものが、近年では、「女性タレント」「女子アナ」などの肩書の紹介のみにとどまり、顔や耳など、個人を特定されかねない部分にはモザイクが入るようになった。こうしたベッド写真がスクープされるたびに、ネット上では「一体誰なのか?」が盛んに議論され、騒ぎがさらに大きくなっていくのはよくあるケースである。
週刊誌サイドは、リベンジポルノ防止法に抵触しないよう、個人を特定できないようにしているということなのだろうが、ここで、ある疑問が浮かぶ。それは、女性タレントにこうした対応が取られる一方、男性タレントは、今も実名かつモザイク一切なしの写真が掲載されていることだ。最近でも、関ジャニ∞・大倉忠義、錦戸亮のベッド写真が週刊誌に掲載されており、ネット上では「これはリベンジポルノではないのか?」と声を上げる人も散見された。
リベンジポルノ防止法の内容を詳しく見てみると、「私事性的画像記録」の定義に「1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態」「2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」「3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」とある。
これらには該当しないと判断され、実名かつモザイクなしで掲載されたのかもしれないが、芸能人に限らず、被写体が男性の場合、それがリベンジポルノであるという意識が浸透していない可能性もあるのではないだろうか。そんな疑問を、『リベンジポルノ―性を拡散される若者たち』(弘文堂)の著者であるメディア学者・渡辺真由子氏に話したところ、男性のリベンジポルノ被害が可視化されにくい背景が見えてきた。