サイゾーウーマン芸能韓流『ミッドナイト・ランナー』の犯した罪 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 韓国映画『ミッドナイト・ランナー』での「朝鮮族」の描かれ方と、徹底的「偏見」の背景とは 2020/03/27 19:00 崔盛旭 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 「朝鮮族」の背景にあるもの 朝鮮族は、主に中国の東北3省(遼寧・吉林・黒竜江)に居住する少数民族としての朝鮮人を意味する。この地域への朝鮮人移住の背景には、二つの歴史的変動があり、一つは1881年に清朝が実施した封禁政策の解除である。清朝発祥の地であるこれらの地方に、清は長い間外国人を入れないようにしていたのだが、漢人や朝鮮人による不法移住が続いたため、解除せざるを得なくなったのだ。とりわけ朝鮮人の場合は、長く続いた凶作による飢餓や貧困から逃れる目的が大半だった。 もう一つは、1910年の日韓併合後、日本の植民地支配から逃れるための朝鮮人の大量流出だ。東北3省は旧満州に当たる地域で、特に抗日闘争の拠点としても重要な役割を果たしたことで知られるが、45年の独立後も中国の解放闘争や朝鮮戦争の混乱の中、半島に戻れない朝鮮人が多く残ったままだった。そして55年、中国の少数民族優遇政策のもと、延辺朝鮮族自治州(吉林省)が成立し、朝鮮の言語や文化、伝統を守りながら現在に至るまでディアスポラとして生活している。 韓国が朝鮮族との「再会」を果たしたのは、まだ中国と韓国の間に国交がなかった79年のこと。文化大革命の後、中国政府が人道政策の一環として、中国内の朝鮮族に韓国訪問を許可したのだ。当時朝鮮半島をめぐって、日本・韓国・中国・北朝鮮の間で「地域平和のため」人的交流の必要性が共通認識されたことも後押しとなり、まずは中国政府によって厳選された朝鮮族が韓国を訪問した後、88年のソウルオリンピック開催や92年の中韓国交回復によってその数は急増した。およそ70万人が韓国に帰国しているが、現在も中国に暮らす朝鮮族も、いまだ180万人ほどいる。 以上のような経緯で、朝鮮族は再び朝鮮半島に戻り、韓国人として暮らすようになったのだが、その数が増えるにつれて当然犯罪者も出始めた。犯罪者は朝鮮族のごく一部にすぎないが、何かあればすぐにメディアが大きく取り上げ、まるで朝鮮族そのものに問題があるかのような悪いイメージが作り出されていった。インターネットで「朝鮮族」を検索すると、瞬く間に「殺人」「組織暴力」「臓器売買」「結婚詐欺」「オレオレ詐欺」といったワードが後に続く。 次のページ 韓国の公共放送が1年も流し続けた「偏見」 前のページ1234次のページ 楽天 ミッドナイト・ランナー デラックス版 関連記事 難解といわれる韓国映画『哭声/コクソン』、國村隼が背負った“韓国における日本”を軸に物語を読み解く歴代4位の韓国映画『国際市場で逢いましょう』が、韓国人の心をかき乱す理由――「歴史の美化」と「時代に翻弄された父親」の残像パルムドール受賞『パラサイト』を見る前に! ポン・ジュノ監督、反権力志向の現れた韓国映画『グエムル』を解説韓国映画『金子文子と朴烈』、“反日作品”が日本でロングランヒットとなった魅力とは?韓国映画『共犯者たち』の皮肉すぎる“その後”……主要メディアが政権に忖度したことで起こる「現実」とはなにか