カルチャー
ホラー女王・犬木加奈子先生インタビュー【前編】

「たたりちゃんは私だった」犬木加奈子が回顧する“少女ホラー全盛期”と“いじめの実態”【『サバイバー』インタビュー前編】

2020/03/04 17:00
有山千春(ライター)

『サバイバー~破壊される子供たち~』(C)犬木加奈子/ビーグリー

 これまで、「虐待は経済的に恵まれない家庭で起こりそう」という思い込みがあったかと思いますが、『サバイバー』で虐待をするのは歯医者を営む父親にしました。「知的水準が高く裕福な家でこそ起こっている問題だ」ということを、世の中の人に知ってほしかったという思いがあったから。そんななか、千葉の事件の父親が、まさにそれで。「わたしの漫画ともろかぶっている」と思いながら、過激表現のレギュレーションに引っかかるのではないかとビクビクしながら描いていました。

担当編集 連載相談をしたのが2018年10月で、決定が19年のはじめですね。その直後、1月25日に野田小4女児虐待事件が報道されて。でも『サバイバー』はまったく引っかかりませんでした。

犬木 そうだったんだ!

担当編集 レディコミのように「エンタメとして面白く見せる」という意図ではなく、社会派ヒューマンドラマとして「リアルを見せる」ものだったので。

――“下世話”な切り口ではない、ということですね。

犬木 好奇心そそるグロテスクな面だけを見せると“不謹慎”になるけど、そうではないですからね。

担当編集 先生は、過去の実在事件を細かに調べていて、虐待を受けた子どもの“その後”を受け入れる施設が少ないことを問題視していました。生き残った子がその後どうなるのかって、報道もされませんしね。それが今回の『サバイバー』のひとつのテーマでもあります。非現実的要素を入れず、リアル視点で描いていただいているので、問題はありませんでした。配信前は、会社のほうからはかなり言われましたけどね。

犬木 ごめんなさい!

担当編集 「東証一部に上場している会社が、こういったテーマって、どうなの?」みたいな……。

――どういうことでしょう?

担当編集 電子書籍の販促のカギはバナー広告です。「虐待をテーマにすると、広告出稿先のレギュレーションに引っかかるのではないか?」という懸念があったようなんですよ。実はそれで一度、連載会議でボツになったんです。でも、自分が責任を持つ形で半ば強制的に企画を通したという経緯があります。

犬木 わたしっていつもそうなんです! こんなわたしに作品を描かせてくださって! だからいつも担当さんには頭が上がらないのよねえ。

――先生の漫画は、世に出す意義がありますもん! 

(後編は3月5日公開)

有山千春(ライター)

AV制作会社広報、実話誌編集者を経てフリーライターに。女性向けWebサイトや週刊誌等で執筆中。

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Twitter:@sansihumiko

最終更新:2020/03/05 20:16
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