サイゾーウーマンカルチャーインタビュー犬木加奈子インタビュー・前編 カルチャー ホラー女王・犬木加奈子先生インタビュー【前編】 「たたりちゃんは私だった」犬木加奈子が回顧する“少女ホラー全盛期”と“いじめの実態”【『サバイバー』インタビュー前編】 2020/03/04 17:00 有山千春(ライター) マンガインタビュー社会 「悪書追放運動」と「コンプライアンス」 犬木 創刊号が20万部で、そこから積み上げていったようですね。最終的には、当初は「ホラー誌では描きたくない」と言っていた少女フレンドの作家陣たちも、「サスホラで描きたい」と言うようになったそうです。その後、各出版社こぞってホラー誌を作っていましたよね。 「サスペンス&ホラー」(講談社/平成10年8月24日号) 犬木 そんな背景もあり、『少女フレンド』で『たたりちゃん』の企画が通ったんですよね。なにより、企画を通してくれた担当編集さんのおかげですね。 ――当時、なぜそんなにホラー誌が売れたんでしょうか? 犬木 1955年、ホラー漫画が一斉に消えた時代がありました。悪書追放運動として一斉に漫画がバッシングされ、水木しげる先生でさえ仕事に困っていた時代です。今でいう“コンプライアンス”ですね。そうしたなか、『サスホラ』創刊の80年代後半あたりから、ようやく大手出版社でホラー漫画が解禁になり始めました。それで、子どもたちが一斉に飛びついたんですね。子どもって好奇心の塊だから、怖い話が大好きなんですよ。それでホラー漫画ブームが来たのかなと思います。 ――当時、犬木先生の元に、「これはけしからん!」という声は届きましたか? 犬木 なかったですね。そうそう、最近インタビューをしていただく機会があるんですが、必ずインタビュアーの方に「コンプライアンス的な締め付けはありませんでしたか?」って聞かれるんですよ。 ――最新作『サバイバー』を連載中ですが、それに関するインタビューですね。児童虐待をテーマにした作品で、子どもへの暴力やネグレクトの末の凍傷での足指欠損など、リアリティのある描写が満載です。こちらはどういったきっかけで描くことになったんですか? 『サバイバー~破壊される子供たち~』(C)犬木加奈子/ビーグリー 犬木 数年前まで漫画家としての活動を10年以上休養していましたが、その間、図書館で興味を引く本を読みまくっていました。すると児童虐待に関する本に行き着き、読み漁り、平和で淡々とした日常を送るわたしたちには想像を絶する“異常な空間”があるのだと、衝撃を受けたんです。 そんなときに連載のお話をいただきました。それで担当編集さん(※インタビュー同席)に、「いま児童虐待に関する本を読んでいて、これをテーマにしたい」と相談し、前向きに考えてくださったんです。でも、企画が通るまでに時間がかかりましたよね? しかも、ネームを1、2本描き終えた頃、千葉県の児童虐待死事件が起きたんです。 次のページ 虐待は「不謹慎」で「レギュレーション違反」? 前のページ1234次のページ Amazon 不思議のたたりちゃん1 関連記事 虐待を受けた子どもの苦しみを理解する重要性――NHK『クロ現』「虐待後」を生きる~癒えない心の傷~虐待者の心理を理解する必要性について――『ザ・ノンフィクション』「目黒・結愛ちゃん虐待死事件」目黒・結愛ちゃん虐待死で懲役8年――専門家が語る「虐待を防ぐために私たちがすべきこと、社会がすべきこと」親による児童虐待の疑いで、児童相談所から保育園に連絡! 「やっぱりな」と感じるサインは?セレブ家庭で虐待は起こらない? 南青山児相建設計画、元児童福祉司が語る「反対派」の盲点