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メンタルの問題を公表したセレブたち――うつに悩んだビヨンセ、不安障害を抱えるケンダル、摂食障害に苦しむデミ

2020/03/20 18:00
堀川樹里(ライター)

 少し前までは、精神的な病に偏見を持つ人が多かったため、患っても隠す人がほとんどだった。しかし近年、若いセレブたちが、次々とメンタルの問題を抱えていることを公表している。

 歌手のレディー・ガガは、うつ病や不安神経症、そして19歳の時にレイプされたことの心的外傷後ストレス障害を放置していたため線維筋痛症を発症してしまったと告白し、「トラウマはすぐに治療しなくちゃダメ」と声を上げた。アイドル出身のマイリー・サイラスは、薬はあまり好きではないといいつつ、抗うつ剤で症状が改善されたようで、「人に話したり薬を飲んだりすることに抵抗を感じる人が多いけど、大丈夫だよ」と、同じような症状を持つ人を励ましている。同じくアイドル出身の歌手セレーナ・ゴメスは、難病・全身性エリテマトーデスの副作用として、不安障害、うつ病を発症。悪化する前に精神医療施設に入院し、そのことをファンにもきちんと公表している。

 世界保健機関(WHO)によると、うつ病に悩んでいる人は世界で約2億6,400万人。メンタルの問題は一人で抱え込んでしまいがちだが、セレブが自身の精神疾患をオープンに語ることにより、「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」と勇気づけられる人が世界中にいるのである。今回はそんな、メンタルの問題をカミングアウトしたセレブたちを紹介したい。

元祖ぶっ飛び女優の裏に、深い苦悩が……

双極性障害に悩んだ、キャリー・フィッシャー

 偏見をもたれやすい双極性障害の罹患だけでなく、精神科病棟に入院して治療を受けたこともオープンにしたキャリー。米社会で双極性障害に対する理解度が上がったのは彼女のおかげだといわれている。

 『スター・ウォーズ 』のレイア姫として知られるキャリーだが、もともとは2世女優。ハリウッドで絶大なる人気を博した女優デビー・レイノルズと、人気歌手エディ・フィッシャーの間に誕生。赤ん坊のころに、父は大女優エリザベス・テイラーと不倫し、彼女と結婚するためにデビーと離婚。母親に引き取られたキャリーは、大人に振り回されながら成長した。メンタルの問題は子どものころから抱えており、1999年に受けたインタビューでは、「15歳のころからセラピストの世話になり、今は3人のセラピストに診てもらっている」と明かした。


 17歳で映画デビューを果たし、その2年後に『スター・ウォーズ』で大ブレーク。女優として活躍する一方、作家としても頭角を現し、ベストセラーとなった自叙伝『崖っぷちからのはがき』(87)は映画化までされ、同書でキャリーは自身の薬物・アルコール乱用を包み隠さず告白した。そもそも依存症になったのは、双極性障害が原因だった。コカインなどのドラッグや鎮痛剤など薬物を乱用したのも、躁うつ症状を抑えるため。精神的な安定を求めて薬物依存になっていたのだと語った。

 キャリーは、97年に精神科病院に入院。退院後も5カ月間通院した。薬物治療を受け、薬はずっと飲み続けていることを公にしていた。08年にリリースした自叙伝『Wishful Drinking』では、「双極性障害を抱えて生きるということは、全身全霊を尽くさなければならない挑戦であり、とんでもないスタミナや、それを超える勇気も必要なの。だから、この病を抱えてなんとか日常を送っているとしたら、それは誇りに思うべきことよ。恥じるなんてとんでもない」とつづり、双極性障害に苦しむ多くの人に勇気を与えた。

 精神疾患と共に生きるのは容易なことではないが、上手に折り合いをつけて生きられるようになったと自負していたキャリー。世界中の人々に愛された彼女は、16年12月、心臓発作により60歳で死去。体内からはアルコールやコカイン、MDMAなどの薬物が検出され、最期まで双極性障害に苦しんでいたのではと同情を集めた。

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