犯罪ジャーナリスト・小川泰平インタビュー

「令和のキャッツアイ」に騒然! 捜査三課の元刑事が語る、連続窃盗犯に“異名”がつくワケ

2020/02/22 16:00
サイゾーウーマン編集部
Photo by Dick Thomas Johnson from Flickr

 1月下旬、東京・新宿区内のホスト男性宅に侵入し、現金約100万円と、ネックレスなど(約140万円相当)を盗んだ20代女性2人が、建造物侵入と窃盗の容疑で逮捕された。女性2人組、かつ同様の窃盗事件を繰り返していたことから、彼女たちは、捜査員の間で「令和のキャッツアイ」と呼ばれていたといい、その“異名”がニュースで報じられると、世間はそのインパクトの大きさに騒然。一時はTwitterのトレンドに上がるほど、「令和のキャッツアイ」は注目を集めたのだ。

 連続窃盗犯に、こうした“異名”がついていることはよくあり、ニュースなどで「風呂屋のミッチー」「ギャン(ブル場)のあぶさん」「デパ地下のさと婆」といった名前を見聞きした人は多いのではないだろうか。しかし、そもそもなぜ捜査員たちは、連続窃盗犯に“異名”をつけるのか? 名づける際のルールはあるのか? 今回、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に話を聞いた。

“異名”が捜査員の士気を高める

 現職時、「盗犯」を担当する警察本部捜査三課に所属していた小川氏。連続窃盗犯の“異名”は、「捜査する中で自然とつけられるもの」だという。例えば、捜査員が張り込みを行う中、携帯電話で連絡を取り合う際などに、“異名”が用いられるのだそうだ。

「現行犯逮捕のときは別として、捜査員が数カ月かけて行動確認を行うような窃盗犯には、よくつけられますね。なぜかと聞かれると、捜査上、何か特別なメリットがあるわけではないのですが、捜査員の士気が上がることはあります」

 確かに、捜査員の中で“異名”がつけられることで、団結力が高まり、捜査に気合が入るということは想像できる。しかし、窃盗犯以外ではあまり“異名”を聞かないのはなぜなのだろう。


「殺人犯や暴行犯は、次にいつ犯行に及ぶかわからない。しかし、窃盗犯は泥棒だけで飯を食っていることが多いので、釈放されてもまた同じことを繰り返すのです。そういった場合、“異名”があると、捜査員の間で話が通じやすいという面がありますね。窃盗犯のフルネームは忘れてしまっても、“異名”だったら覚えていることも少なくありません。捜査員の間で“異名”を交えながら、『俺、いま〇〇をやってて』『〇〇なら、俺も前担当したよ』なんて、盛り上がることもありましたね」

 一方で、“報道”においては、“異名”が大いに活躍する面があるという。

「今回の『令和のキャッツアイ』の手口は、巧妙なわけでも、最新の技術を用いたわけでもない、大変稚拙なものでした。そのため通常であれば、メディアに大きく報じられるような事件ではないのですが、『令和のキャッツアイ』という“異名”によって、新聞や情報・報道番組で大々的に取り上げられ、事件を風化させずに済んだ。メディアが、警察の広報活動を担ってくれたとも言えますね。つまり“異名”をつけることは、犯罪の抑止にもつながると言えるのではないでしょうか」

警察の裏側/小川泰平