コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

明治天皇の”スペオキ”女官は「口ベタなとこが逆にいい」!? 女の嫉妬渦巻く宮廷の側室【日本のアウト皇室史】

2020/02/08 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

――まさかの?

堀江 そう。当時の山川三千子は、宮中の仕事をはじめてまだ日の浅い女官です。そういう目下の女官ほど、宮中の廊下は天皇が通るであろう時間を避け、あらかじめ用事を済ませてしまうなど、高位の方々の御目につかない工夫をしなければなりませんでした。それが身分社会のマナーです。もし天皇にバッタリ出会ったところで、女官は廊下のすみに立って、黙礼しつつ、天皇が通り過ぎるのを待つだけです。女官からお声がけをする、もしくは天皇からお声がけをされてしまうなどということは、基本的にありません。

 ところが、大正天皇に廊下でバッタリ出くわしてしまった山川三千子に、大正天皇はお声がけをなさいました。しかもロクに彼女のことを知りもしないのにしつこく話しかけてきたわけですね(笑)。いわゆる「ナンパ」です。すくなくとも山川三千子はそう感じました。

 「お前は絵が上手だってね」とか「では何か歌がうたえるだろう」……などと会話の糸口を探るべく、山川三千子が「違います」「歌えません」などと言っているのに、しつこく絡んだうえ、天皇は本題を切り出されます。それは「(おまえは)自分(=山川)の写真を持っていないか」というものでした。しかも、このやり取りの最中、ジリジリと彼女は後退し、一方で彼女を追いかけるように、一歩ずつ距離を詰めようと近づいてくる大正天皇のお姿があったそうな。

――山川三千子さんの大ピンチですが、次回につづきます!

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2020/02/08 17:19
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