『まいにち湯豆腐』書評:「ラクを優先派」から「探求心強め」まで幅広いタイプを満足させるバリエーション
時短、カンタン、ヘルシー、がっつり…… 世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本(食本)を、 フードライター白央篤司が1冊選んで、料理を実践しつつご紹介!
「この人なら、どの本でも間違いない」と信頼している料理家さんが3人ほどいる。そのうちのおひとりが小田真規子さんだ。味のレベル、レパートリーの広さはもちろん、時代と共に変化し続ける家庭料理のニーズをきちんと見つめ、それらに応じようという姿勢が好きなのだ。
本書は温かい豆腐料理をメインとしたレシピ本で、2016年に出版されたヒット作『まいにち小鍋』(同社)に続くもの。かつては鍋といえばイコール大鍋のこと、家族そろって囲んでつつくものだったが「それは昔の話」と著者は断言する。
「この十数年で、個食化が進みました。おひとり世帯も急増し、家族で鍋を囲むシーンは激減しています。夫婦共働きが増えたことで、家族の帰宅時間はバラバラになり、家族がいてもひとりで晩ご飯を食べるのが当たり前のことになりつつあるようです」(「はじめに」より)
ひとり用のカップスープや小分けの総菜、ひとり鍋セットが人気であることに着目し、“鍋も小鍋の時代”と小田さんは考え、『まいにち小鍋』の企画に至った。すると「豆腐メインの小鍋レシピがもっとほしい」という反響を多くもらうとに。値段が手ごろで、カロリー的に罪悪感の少ない豆腐が人気なのはうなずけるが、一冊の本になるほど要望が多かったとは驚く。豆腐の長所を、小田さんは著書内で次のように挙げている。
・扱いが簡単
・そのままでも食べられる→加熱の失敗がない
・約90%が水分、それなりの満足感を得られつつカロリーも糖質も少ない
・タンパク質がとれる
・ボリューム感が出る
・経済的。安いものでもだしや具材の味わいを吸っておいしくなりやすい。高いものでもそれほど高いわけでもない
・どんな味にも染まるので調理バリエーションが豊富
うーむ、納得。スーパーに行くと激安なのは1丁50円ぐらいで、味が悪くないのもある。質の良いものでも200円台で買える。主菜にも副菜にもなる存在。融通無碍を具現化したような食材だ。