天皇に仕える女官は “プロ彼女”? 「お世継ぎ」「添い寝」と女の争い【日本のアウト皇室史】
――権典侍と典侍の違いを教えてください。
堀江 ものすごく乱暴な説明ですけど、権典侍の方が側室となる確率はかなり“高め”です。天皇にお目通りがかなう高等女官であれば、天皇のお手つきになる可能性はどの役職にもあるのですが。
また、権典侍には天皇に添い寝する「夜伽(よとぎ)役」という、大事なお役目がありました。天皇のお側近くに仕える存在であるべきという観点から、自分の私室である「局(つぼね)」に引きこもりがちで、外出もまれだったそうです。いわば「プロ彼女」ですね。現代でも、アイドルとか俳優の“彼氏”から、ときたま来るお誘いの連絡を逃したくないので、家でずーっと待ってる女性、いますよね。ああいう感じ。
典侍の方が権典侍よりも、キャリアウーマンのカラーは強く、また格上の存在ですが、典侍が天皇の側室となることもありました。
側室的な女性は、なんだかんだいって嫉妬されますし、女社会において肩身が狭い。それに天皇のお側近くに仕えた人々の語った言葉から、明治天皇がいかに魅力的な男性であったかは明らかなんですね。例えば女官たちだけでなく、お側近くで御用を勤めた「侍従職出仕(じじゅうしょくしゅっし)」という役職の少年たちの目にも、明治天皇は「理想の男性」として映っていたようです。
侍従職出仕として仕えた坊城俊良による『宮中五十年』(講談社)には、「正装に威儀を正された陛下の、一段と晴れやかな、輝く竜顔のおん美(うるわ)しさ、私は今でも、ときどき思い出しては、恍惚となるのである」なんて熱烈な一節が出てきます。10歳くらいの男の子にもこれだけ魅惑的なんだから、明治天皇の微笑みは、女官たちにとってどれほどキラースマイルだったことか……(笑)。まぁ、天皇と恋愛関係にはなり得ない少年だったからこそ、「恍惚となった」という本音が後に書けたのでしょうが。