老いゆく親と、どう向き合う?

年収2000万円のエリート夫が二度の破産――「夫婦ってなんだろう?」と妻が自問するワケ

2020/01/12 19:00
坂口鈴香(ライター)

「キャンプみたいで楽しいね」

 苦労といえば、折田さんの結婚生活も苦労続きだ。折田さんは笑顔を絶やさないが、その話はかなり深刻だ。

 一流企業に勤めていた夫、稔さんは、元同僚に誘われて独立。共同で事業をはじめたがうまくいかず倒産。その後一人でまったく畑違いの健康食品販売に手を出した。

「サラリーマン時代、とんとん拍子に出世して、天狗になっていたんだと思います。海外赴任もして、メイドさんを使う生活に何か勘違いしてしまったんでしょう。子どもたちが小さかった頃、家庭を顧みなかったときは、こんな生活をしていると家族がバラバラになってしまうと思い、一時期、家を出て目を覚まさせたこともあります。でも、独立については私も強く反対はしませんでした。夫がやりたいのなら、好きなことをやらせたいと思ったんです」

 健康食品販売は、稔さんの大学時代の同窓生がやっている会社の流通ルートに乗せてもらえたこともあり、一時はかなりの業績を上げていたという。このまま順調に成長すると思っていた矢先、稔さんと同窓生との間にトラブルが起き、再び倒産の憂き目を見た。

「私たちの生活は、本当に浮き沈みが激しいんです。サラリーマンの頃は、年収2千万以上ありました。最初の倒産のときは、借金を双方の親から援助してもらってなんとか切り抜けましたが、二度目の倒産で貯金も底をつきました。電気代も払えなくて、電気が止まったこともあります。ろうそくでご飯を食べたんですが、まるでドラマみたいなことが現実にあるんだと驚いたほどです。そんなとき、長女が『キャンプみたいで楽しいよ。たまにはこういうのもいいね』と明るく言ってくれて、子どもながらに家族のことを考えてくれているんだと、心で泣きました」


 家も激変した。セレブが住む都心の高級マンションから、今は公営住宅だ。クルマも売り、子どもたちの学資保険もすべて解約したという。

――続きは、1月26日公開

坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/01/12 19:00
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